通学路防犯カメラの法的問題点(奥津小学校の事例)
少し前の話だが,中国新聞の地域ニュースに,興味深い記事を二つ見つけたのでご紹介したい。
一つは,平成18年11月3日付の記事で,見出しは「防犯カメラで通学路を点検」とあり,岡山県鏡野町の奥津小学校で,通学路に設置した9台の防犯カメラにより,児童の登下校の安全を点検するシステムが開始されたとのことである。写真が貼付してあり,「コンクリート柱の上部に据えられた防犯カメラの下,元気に集団登校する奥津小の児童」と説明書きが添えられている。全体として,歓迎ムード一色の記事である。
もう一つは,平成18年11月13日,つまり上記の記事の10日後の記事で,見出しは「課題抱える通学路防犯カメラ」となっている。記事中に,「先進的な犯罪抑止策として注目される一方,監視体制の整備や住民のプライバシー保護など課題も抱える。町と町教委は9月までに,住民や保護者への事前説明会を開催。撮影は登下校時の計5時間に限定し,カメラの設置場所にその旨を明示した。」との記載がある。こちらは,同じニュースソースであるにもかかわらず,監視カメラシステムの「負の側面」に配慮した内容となっている。
僅か10日の間に,これほどニュアンスの違う記事が出た背景に何があるのか。最初の記事に対して,読者などから問い合わせや苦情があったから後の記事を出したのか,それともただの穴埋め記事なのか,その辺は分からない。
記事によれば,奥津小学校の児童数は74人とのことである。岡山県の奥津といえば,奥津温泉郷で有名な地域であるが,かなりの田舎である。学区は広大であろう。写真には「集団登校」する児童が写っているが,片道1時間以上一人で歩いて登下校する児童も多いのではないかと想像される。このような地域において,監視カメラシステムを使って登下校を監視する必要性があるのか,あるとして,9台で足りるのか,監視カメラシステムは職員室から操作するというが,果たして登下校の時間中,担当者が張り付いて9台のモニターを監視するという作業が合理的で実現可能なのか,濫用のおそれはないのか,もし,職員が目を離している隙に事件が起きたら,学校側は責任を取るのか,など,記事に触発される疑問は尽きない。(小林)
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