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2007年1月13日 (土)

七夕のドタバタ(4)

 聖マタイ病院の救急救命センターで死に瀕していたムハマンドは,私たちが駆けつけた時にはすっかり回復していた。妻はムハマンドに抱きつき,泣きながら言葉を交わした。担当の女医はてきぱきと複数の救急患者に対する指示を出しながら,ムハマンドはおそらくストレス性の一時的な呼吸障害であり,1時間ほど様子を見て問題がなければ,入院の必要はないと言う。警察官が近づいてきて,刑事訴訟法上は,被疑者ムハマンドは警察官の立ち会い無く弁護人と接見できるが,今回は特別に病室にいることを許してほしいと聞いた。私は構いませんと答えた。どうせ通訳がいない以上,話もできないのだ。ただ,ムハマンドの妻に事情を聞いたりするのは止めてほしいと伝えた。警察官は笑って,もちろんですと答えた。彼は捜査担当ではないし,イラン人と話ができないことは私と同じだった。

 2時間ほどして,救急車が到着し,ムハマンドは警察署に護送されることになった。豪雨は止み,晴天の空には星が光っていた。腰縄をつけられ連行されるムハマンドに,妻が駆け寄って抱きついた。担当警察官も素知らぬふりをして,別れの時間を与えた。

 「そういえば,今日は七夕ね」

 私の隣で見送っていた担当の女医が,突然そう言った。見ると,眼鏡の奥で,救急車の赤色灯がきらきらと光っていた。 (小林)(完)

(この記事は実話ですが,登場した個人名,団体名はすべて匿名にしてあります。)

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