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2007年3月20日 (火)

マンションなど集合住宅に防犯カメラを設置する場合の法的問題点

マンションなど集合住宅は,私邸が物理的に集合しているものであるから,基本的には,私邸に準じる強度の施設管理権が存在する。よって,外部の一般人との関係では,「監視カメラ設置中」などの告知文の掲示は不要であり,目的の正当性や撮影手段の正当性も緩やかに解されて良い。

しかし他方,集合住宅に特有の問題もある。居住者が部外者を監視するほか,居住者が居住者を監視するという側面があるからだ。

すなわち,集合住宅において防犯カメラが設置される例として,純粋な防犯目的ばかりでない場合が増えてきている。具体的には,ゴミ出しルールの違反やタバコのポイ捨て,ペットの飼育や粗相の不始末など,端的に違法とはいえないが住民の管理規約違反もしくはマナー違反を防止する目的で,防犯カメラが設置される場合が少なくないのである。

ところで,集合住宅には,区分所有者全員が共有している「共用部分」と,区分所有者本人だけに所有権がある「専有部分」とが存在する。専有部分には,所有者の意思に反して防犯カメラを設置したり,専有部分が画角に入る場所に防犯カメラを設置したりできない。共用部分であっても,専用使用権のある共用部分,例えばバルコニーやベランダについては専有部分と同様である。これら共用部分に専用使用権のある住人が防犯カメラを設置することも,「共用部分の変更」(区分所有法17条)にあたるから,管理組合の承諾なくしてはできない。以上の部分を除いた共用部分,具体的にはエレベーターや外廊下,エントランス,駐車場や自転車置き場,ゴミ集積場などが問題となる。

手続面については,共用部分に防犯カメラを設置することは,区分所有法17条1項の「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの)」にあたるから,管理規約に別段の定めがない限り,区分所有者および議決権の各過半数で議決することができる(区分所有法38条1項)。

しかし,これはあくまで手続規定であるから,議決の内容ないし運用において居住者のプライバシー権を不当に侵害することは許されない。

例えば,特定の住人や特定住戸への訪問者を監視する目的で防犯カメラを設置することは,よほどの事情がない限り,違法である。また,録画の有無,閲覧権者と閲覧手続,保存期間や第三者提供についての運用規則を定め,居住者の閲覧に供することが必要である。

「共同住宅の防犯上の留意事項」及び「防犯に配慮した共同住宅の設計指針」の策定(警察庁と連携した防犯に配慮した共同住宅の普及施策)についてはこちらhttp://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/press/h12/130323-1.htm

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