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2007年3月24日 (土)

賃貸集合住宅において家主が防犯カメラを設置する場合の法的問題点

 前回集合住宅に防犯カメラを設置する場合の法的問題点を検討したが,集合住宅は分譲マンションばかりではなく,賃貸マンションやアパートもある。また,分譲マンションでも,区分所有者が居住せず,賃貸する場合もある。このような場合,家主である所有者が集合住宅に防犯カメラを設置し運用することについては,どのような法的問題点があるだろうか。

手がかりとして,一戸建ての賃貸住宅をまず考えてみよう。一戸建ての賃貸住宅の玄関先に,賃借人の承諾がないのに,家主が勝手に防犯カメラを設置することは,いかにも許されないように思われる。

 これに対して,賃貸集合住宅において,オーナーが勝手にエントランスに防犯カメラを設置することは許されるような気がする。そうだとすれば,この違いはどこから来るのだろうか?また,オーナーが勝手にやって良い限界点はあるのだろうか?

 集合住宅には,玄関やエレベーター,階段,共用廊下,ゴミ集積場や自転車置き場といった共同利用部分と,各住戸やそのベランダといった専用使用部分とがある。専用使用部分については,その住戸の住人のプライベートな空間であるから,家主といえども,勝手に防犯カメラを設置することはできない。そもそも,家主が勝手に店子の家に侵入することは,住居侵入罪となる。

 これに対して,共同利用部分については,各住戸のプライベートな空間ということはできないから,家主は施設管理権に基づいて,防犯カメラを設置できるということになる。但し,最も頻繁に撮影される住人側としては,家主に対して,撮影内容や録画保存に関する情報の開示を要求できるというべきだろう。

 微妙な問題としては,「共同利用部分」と「専用使用部分」の境界線はどこか?という点である。各住戸のプライベートな空間は,必ずしも,その住戸の玄関で明確に区切られるものではないからである。最近は集合住宅の構造も複雑になり,ある部分から先は一つの住戸の住人しか利用しないような共用廊下もある。このような場合には,共同使用部分といえども,その住戸の住人の了解無く防犯カメラを設置することはできないと考えるべきであろう。(小林)

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