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2007年4月21日 (土)

私邸に防犯カメラを設置する場合の法的問題点(5)

しつこくて恐縮だが,この件についてもう1点だけ,問題点を指摘しておきたい。

平成19年3月6日付のサンケイウェブによると,世田谷区成城署の指導で202世帯が405台の防犯カメラを各家庭に設置した結果,侵入盗(空き巣など)が平成17年の485件から,平成18年の266件に,約45%減少したという。どのような理由で泥棒が犯行をやめたのか,については検討の余地があるものの,この減少は偶然とは思われないから,防犯カメラ設置の一つの成果と見るべきこと,については前回までのブログに書いた。

今回問題としたいのは,平成19年以降の侵入盗数が揺り戻すのではないか,という危惧についてである。というのは,記事には,「映像が一助になり,犯人が逮捕された事件はひき逃げなど8件11人に上る」と書いてあるからだ。

犯罪認知件数が減ったとはいえ,成城所管内の犯罪認知件数は平成18年に3923件である。このうちたった8件,割合にして0.2%の検挙にしか,防犯カメラは役に立っていないのである。しかも,8件のうち1件はひき逃げであり,記事上,残り7件のうち2件はひったくりと落書き(器物損壊)である。つまり,平成18年に認知された侵入盗の件数266件のうち,防犯カメラのおかげで犯人逮捕に至ったのは,計算上,高々5件である。

ここでもう一度,「防犯カメラによって泥棒が犯行をあきらめる理由」を考えてみよう。その詳細はどのようなものであるにせよ,泥棒が防犯カメラによって犯行を諦める理由はただ一つ,逮捕されたくないからである。言い換えれば,防犯カメラに撮影されると,逮捕される危険が増すから,犯行を諦めるのである。ところが,防犯カメラを設置した後でも,266件の侵入盗のうち,最大でも5件しか犯人逮捕に至らない,割合にして約1.9%のリスクしかない,と分かったら,泥棒は犯行を諦めるであろうか。私が泥棒なら,この程度のリスクなら冒すと思う。そうなると,今後,防犯カメラの限界を見切った泥棒が出てきてもおかしくないのである。

もっとも,この仮説は,266件の侵入盗が発生した場所と,防犯カメラが設置された場所とを厳密に照らし合わさなければ,証明できない。この点は注意しなければならない。しかし,少なくとも確実なことは,新聞記事だからといって,あるいは警察の発表だからといって,数字を鵜呑みにしてはいけない,ということである。(小林)

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