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2007年4月17日 (火)

私邸に防犯カメラを設置する場合の法的問題点(4)

平成19年3月6日付のサンケイウェブによると,世田谷区成城署の指導で202世帯が405台の防犯カメラを各家庭に設置した結果,空き巣などの犯罪が大幅に減少したという。

記事によれば,住宅街への街頭防犯カメラの設置は,プライバシー問題から住民の抵抗があるため,進まなかった。そこで成城署は「防犯意識のある住民による主体的な(防犯カメラの)設置と管理」を行うことにした結果,上記のとおりの成果を上げたのだという。

今回問題としたいのは,プライバシーとの関係である。なぜ,防犯カメラの設置主体を警察ではなく,「防犯意識のある住民」にすれば,プライバシーの問題が解決できるのだろうか。ここでは,防犯カメラを設置したくない住民と,住民ではない一般の通行者のプライバシー問題は,完全に無視されている。防犯カメラを設置したくない住民は,新聞の言葉を借りれば「防犯意識の低い住民」だから,プライバシー権を主張する資格はないということだろうか。

このブログで私は,私邸に防犯カメラを設置する場合,家の回りの合理的な範囲であれば,公道や通行人が撮影の対象になっても差し支えないと書いた。その考えは今も変わっていない。しかし,成城に設置された防犯カメラの映像をWEBで見る限り,家の回りどころか,公道を俯瞰するような形で設置されている。本当にこのようなことをして良いのか,については,未だ議論が熟していないように思うがどうであろうか。

たしかに,住宅街と繁華街,商店街,大通りや駅前広場などは,同じ公共空間とは言っても,その程度に差があることは事実である。その意味で,住宅街をマンションのような独立空間とみなして,地域コミュニティによる一種の施設管理権が当該住宅街に及ぶと考えることも不可能ではない。しかし他方,住宅街とはいえ,公道は公道である。誰であっても,その街を通る権利がある。

また,防犯カメラの設置と管理を各住戸に任せることは良いことなのか,という問題もある。警察に任せるより良い,という意見もあろう。しかし,住戸によっては,毎日カメラをモニタリングして「3軒となりの奥さんは,ご主人が出張する日に限っておめかしして出かけているぞ。よしこの映像をDVDに録画してご主人に届けてやろう」と考えているかもしれない。別の人は,「見知らぬ男性がほぼ毎日,平日の昼間にお隣の庭を覗いている。きっと不審者だから,警察に通報しよう」と考えているかも知れない。その人は例えば職業的俳人で,その庭先に生えた福寿草の開花を楽しみに,毎日隣町から散歩に来ていたかもしれないのに,である。

オタク評論でも知られる哲学者の東浩紀氏は,「論座」という雑誌の2006年4月号で,「防犯カメラは住宅地に必要なのか」という文章を書いている。住宅街に防犯カメラを設置することは,外部の者に対する排除装置として働くことを危惧している。「ただぼーっと通学路に足っているだけで,不信人物として通報され監視員がやってくる,という光景は(昼間でもふらふらしている30代男性の筆者には)容易に想像がつく」と書いておられるが,この危惧は至極常識的なものと感じる。

この点に関する私自身の結論はまだないが,少なくとも,もうすこし世間の関心を集めてもよい問題である。(小林)

東浩紀氏のブログはこちら http://www.hirokiazuma.com/

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コメント

公道を個人の私物化にしているにしか過ぎない。今は犯罪が減って良かったと思っているが、時間が経つにつれ、犯罪は起きない事が暇でどうしようもなくなり、挙句の果てに、隣人を監視する人が出てきて、隣の人が何時にどうしたとか、酔っ払って帰ってきただのとか、何処で何を買い物してきたとか、あそこの内の子は中学生なのにタバコすっていただの等々、様々な問題が起きるでしょう。そうゆう現象が起きたときに、そこで生活している人たちが監視カメラを息苦しく思うようになり、引っ越す人も出てきたり、プライバシーの侵害だと裁判沙汰になるのは時間の問題でしょう。犯罪が無くなれば個人宅を監視しする道具に過ぎなくなるのは目に見えている。今は自分の首を自分で絞めている事に気付いていないだけの低レベルな発想だったと言う事に気付いていないだけ。うまく警察の実験台に利用された・・住民だ。公的機関がしたら問題になることが住民が自主的にしたことだから法的問題にならないなんて浅はかな考えだし、其れでは、まるで警察が法律を逆手に取って住民を騙したに過ぎなくなるだけでしょう。今一番得をしたのは警察かもしれません。住民のモラルがどれだけのレベルなのか高みの見物と言う所でしょうか?モラルがあっても陸の孤島になるでしょう。個人宅の監視カメラは敷地内だけの撮影は認められても敷地外の撮影は不法行為になる可能性大でしょう。公共の場所を個人が無断で盗撮しているのと一緒でしょ。過剰防衛です。警察もそんな事住民にさせて置きながら、自分たちは取調べのときに一部始終をビデオ撮影させないで一部分を証拠として使おうなんて、証拠ビデオの悪用に思えますがね。何処か間違ってはいませんか?そんな事している日本はモラルの低い低レベルの先進国だと宣伝していることにまだ国民が気付いていないのでしょうか?

投稿: ソレスタルビーング | 2008年9月22日 (月) 03時32分

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