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2007年5月 1日 (火)

監視カメラの犯罪抑止効果について

街頭監視カメラに犯罪抑止効果があるのかについては,「ある」とする説,「無い」とする説,「一部の犯罪についてはあるが,他の犯罪については無い」とする説がある。

ところで香川新聞の平成19年4月のニュースに,こういうものがあった。

「香川県高松市の鬼無地区では、五色台を走る市道沿いを中心に不法投棄が後を絶たず、これまで住民参加型の清掃活動を度々実施。市も看板や監視カメラを設置しているが、効果がなかなか持続しないことから、定期的にパトロールを行い、監視の目を強化することにした。」

監視カメラの効果が持続しないというニュースは,監視カメラの犯罪抑止効果が「無い」とする説を勢いづかせるものであろう。しかし,このニュースから直ちに監視カメラには犯罪抑止効果がないと結論づけるのはやや飛躍がある。

監視カメラが設置されているにもかかわらず,なぜ堂々とゴミを捨てるのか。私は現場を見たわけではないが,「すでにゴミが捨ててあったから」捨てたと見て間違いないであろう。つまり,「ゴミを捨てても,おとがめがない」と分かれば,規範意識の低い不心得者は,ゴミを捨てるのである。これを「割れ窓理論」にならって,「案山子理論」と名付けることにしよう。

案山子は,案山子とばれた時点で,雀に対する抑止力を失う。監視カメラも,張り子とばれれば,同じことである。つまり,「監視カメラに撮影された不法行為は,必ず罰せられる」という実体が伴って,はじめて,監視カメラは犯罪抑止力を持ちうるのである。以前ご紹介した,イギリスにおいて実施される「しゃべる監視カメラ」も,同じ発想であり,カメラを案山子に見せないための工夫と見ることができる。

以上からいえることは,「監視カメラは,撮影された不法行為は必ず罰せられるという運用上の実体が伴って,初めて犯罪抑止力を持ちうる」ということである。もっとも,この言い方は正確ではない。正確には,「運用上の実体」が現実に存在することが必要なのではなく,「運用上の実体が現実に存在すると信じる心情が撮影される側に存在すること」が必要である。このような心情を,「畏れ(おそれ)」という。品が悪くて恐縮だが,立ち小便を抑止するために鳥居を描くのは,人の畏怖心を利用したものである。ちなみに,主として国民のおそれを利用して統治する政治手法を「恐怖政治」というが,監視カメラの犯罪抑止力を維持しようとすることは,恐怖政治につながる一面を持つことには注意しなければならない。(小林)

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