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2007年5月15日 (火)

番台ロボットとプライバシー

そもそも「番台」を知らない読者のために一応解説しておくと,銭湯(銭湯を知らない?フォークグループ「かぐや姫」の「神田川」に出てくるような伝統的な公衆浴場のことです。スーパー銭湯などではないですよ。「かぐや姫」も知らない?そうですか…)には男湯と女湯があり,それぞれの脱衣所が板一枚で仕切られている。その板の端にあり,両方の脱衣所と浴場を見渡すやや高い位置に設けられているのが「番台」である。番台には銭湯の主人が座って,入浴料の徴収を行うほか,脱衣所内での窃盗や,浴場での迷惑行為が無いように,目を光らせている。当然,客は番台に座る銭湯の主人には裸体を見られることになる。私も若いころは,これが結構恥ずかしくて,脱衣所の隅っこで着替えをしたものである。

さて,この番台の機能をロボットに代替させることはできるか。料金の徴収については問題ない。問題は,脱衣所や浴場での不正行為・迷惑行為防止のために,人間に代わって,ロボットを設置することができるか,である。

もう少し突き詰めて考えると,脱衣所で他人(特に異性)に裸体を見られることは,形式的にはプライバシーの侵害にあたるが,客はもちろん番台に見られることは承知で銭湯に入っているので,結論としては違法性の問題は発生しない。この番台が,人間からロボットに代わった場合,プライバシー侵害の程度は大きくなるのだろうか,それとも,小さくなるのだろうか。

直感的には,人間に裸を見られるより,ロボットに見られる方が,プライバシー侵害の程度が少ないような気がする。しかし,よくよく考えてみると,そうでもない。

脱衣所や浴場での不正行為・迷惑行為の防止という目的である以上,番台ロボットはカメラを備えることになるし,その背後には,これをモニターする人間がいる。また,実際に不正・迷惑行為が発生したときに証拠を残す必要上,カメラで撮影された映像は録画されることになるだろう。

番台から人間に自分の裸体を見られても,「裸体」という画像情報は,所詮,その人限りである。多くの場合,自分の裸体が番台の主人の記憶に残ることは無いし,「ものすごい肉体美」か何かの理由で客の裸体が番台の主人の記憶に残ったとしても,その人の脳髄限りのことでしかない。万一,番台の主人が客の裸体を他人に吹聴(「このまえ,すごいグラマーがうちの銭湯に来てさ…」とか)しようとしても,せいぜい,言葉か絵で不正確に描写することしかできない。人間が画像情報を記録したり,これを他人に伝達したりすることには,このように,極めて多くの限界がある。逆に言うと,このような限界があるからこそ,生身の人間である番台の主人に裸体を見られることを,客は許容しているともいえよう。

これに対して,番台ロボットの撮影した裸体の画像情報は,正確無比であり,かつ,全く劣化しない状態で第三者に提供することが可能である。しかも,客の立場から見れば,番台ロボットの撮影する画像を,誰が,どのような意図で見ているか,全く分からない。このように考えてくると,番台ロボットの方が,人間に比べて,プライバシー侵害の程度が高いということになろう。

以上,ただの与太話ではあるが,なかなか難しい問題である。(小林)

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