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2007年5月19日 (土)

リスクアセスメントと裁判(1)

安全工学という学問分野がある。安全工学とは,「現代社会において発生する危険状態(災害)の原因及び過程の究明とその防止に必要な科学及び技術に関する系統的な知識体系をいう」とされている。そして,安全工学の研究は,リスクアセスメントを第一の目的にしている(安全工学会山本一元会長の挨拶文より)。

リスクアセスメントの権威である明治大学の向殿政男教授によれば,「リスクアセスメントとは,リスクを分析し,評価し,低減することを繰り返す手順」である。

重要と思えるのは,第1に,リスクアセスメントが「安全に至る手順(プロセス)」を重視している点だ。このことは,製品・部品の材質や寸法,構造について,結果として一定の基準を充たせば「安全」とみなす伝統的な考え方ではなく,一定の手順を十分なほどに実行すれば「安全」とみなす考え方を意味する。この二つの考え方は,似ているようで全く違う。リスクアセスメントに従えば,極端な話,客観的結果的に一定の危険が残存していても,「安全」とみなされるのである。

このように書くと,リスクアセスメントは安全追求を放棄したのかと思われそうだが,それは誤りである。リスクアセスメントは,前提として,「絶対安全は達成できない」という認識を出発点としている。絶対安全が達成できないという前提の中で,どのようにすれば最大限の安全が実現できるか,というのが,リスクアセスメントの考え方である。そして,「絶対安全は達成できない」という認識は,おそらく正しい。そうである以上,安全実現のプロセスを重視する方が,一定の規格を守ることより,結果としての安全を実現できるのである。

原子力発電所が好例だが,我が国の安全政策は,「絶対安全」を金科玉条としてきた。しかし,その結果発生したのは,構造的継続的な事故隠しである。事故隠しは,伝統的な安全思想の破綻であると同時に,その事故の教訓を次の事故防止に生かせなかったという意味において,原子力発電所を危険に晒してきた。科学技術が高度化した現代社会においては,リスクアセスメントの考え方を取らなければ,より高度の安全を達成できないのである。(続)(小林)

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