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2007年7月16日 (月)

不正改造と製造物責任

ユーザーが誤使用しても,メーカーは原則として製造物責任を免れない。と以前のコラムに書いた。では,メーカー以外の第三者による不正改造があった場合,メーカーは製造物責任を負うか。

基本的な考え方としては,不正改造があったからといって,直ちに,メーカーが全責任を免れると考えることはできない。メーカーに不正改造防止措置を施す義務が認められる一定の範囲においては,このような措置をとらなかったことによる責任が発生する。

もちろん,メーカーに全ての不正改造を予見し防止する義務があると考えるのは酷である。そこで,どの範囲で不正改造を予見し防止する義務があるかが問題となる。

この問題に関しては現在,パロマ工業製のガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故で,遺族らによるパロマ工業を相手に製造物責任を問う訴訟が進行中である。新聞報道によれば,パロマ工業は,第三者による不正改造であるからパロマ工業に責任はないと主張しているようである。他方,原告側は,「簡単に改造を許す設計自体が欠陥である」とか,「不正改造があることを知りながら,取扱説明書などで注意喚起をしなかった欠陥がある」とか主張しているようである。

一般論としては,メーカーに不正改造を予見し防止する義務があるか否かは,その製品の性質,予測される危険の重大性,不正改造の容易さと改造防止策の容易さが規準となると考えられる。つまり,ガス瞬間湯沸かし器のように,予測される危険が火災や一酸化炭素中毒という重大なものであることはメーカーの義務を重くする要素であり,不正改造が容易で,かつ改造防止策が容易であれば,メーカーの義務は重くなる。また,不正改造が容易であるか否かの規準としては,例えば,破壊を伴う改造であるか否か,すなわち切断や溶解しなければ改造できないか,それともネジの取外しと取付けだけで改造が可能か,などが問題となろう。いずれにせよ,誤使用と不正改造を比べた場合,メーカーが予見すべき範囲は,誤使用の方が不正改造より広い,と見てよいのではないかと思う。

参考になりうる裁判例としては,平成4年に札幌市のマンションにおいて,パロマ製ガス瞬間湯沸かし器の不完全燃焼による死亡事故においてパロマの責任が問われた損害賠償請求事件において,平成10年7月28日の札幌地裁判決は,本件事故の原因は追加配線により安全装置が作動することなく点火燃焼する様になっていたことは,販売当時に追加配線が施されたものではないし,販売当時に右のような追加配線が施行されることが予測できた,とも認められないから,追加配線がされたことをもって,本件湯沸かし器の販売当時の瑕疵である,と認めることはできない,と判断し,パロマの責任を否定したものがある。この裁判例については,後日改めて触れてみたい。(小林)

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