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2007年8月11日 (土)

ウォークスルー虹彩認証システムについて

松下電器産業株式会社とパナソニック システムソリューションズ社は,総務省の研究開発プロジェクト「ユビキタスセンサーネットワーク技術に関する研究開発(2005年から開始)」の中の「高精度人物認知技術の開発」の成果として,虹彩認証を活用して歩きながらでも高精度に人物確認が可能な国内初の「ウォークスルー虹彩認証システム」を開発したと発表した。

虹彩認証は,人の虹彩(「黒目」と呼ばれている部分)パターンが指紋と同様各人各様である性質を利用する生体(バイオメトリック)認証の一種である。虹彩認証は精度が高いと言われているが,現在は,専用の器具に眼を押し当てて数秒間静止する必要があるため,多数の人に対して短時間で虹彩認証を行うことが困難であった。今回発表された技術は,人がゲートを歩いて通過するだけで高精度に認証を行う世界初の技術だそうだ。

このニュースを聞いて,「マイノリティ・リポート」を思い浮かべた人は少なくあるまい。この映画では,全市民は虹彩情報の登録を義務づけられ,街中至る所に虹彩認証システムが存在し,街を歩いただけで氏名が特定されて壁に広告が映写されたり,地下鉄に乗っただけで警察が居場所を察知したりする。主人公は警察の目を逃れるため,ヤミ手術を受け他人の眼球を移植するのだ。この映画の舞台は西暦2054年だが,50年待つ必要はなさそうである。

法律的に見た場合,「マイノリティ・リポート」はバイオメトリック認証の法的問題点を二つ浮き彫りにしている。その一つは,人が,好むと好まざるとにかかわらず,その行動を詳細かつ網羅的に把握されることが技術的に可能になった,ということである。他の一つは,虹彩のような生体認証情報は,パスワードと異なり,「必要に応じて変更する」ことができないということである。一度盗まれたら,目玉を入れ換えない限り,一生回復できない損失を被ることになる。

例えば運用方法はどうなるのか。ニュースリリースによれば,このシステムは当面,空港に設置されることを想定しているようである。ところで現在,パスポートのICタグ搭載が国際的に進行しているから,このシステムとタグリーダーを組み合わせれば,直ちにパスポート記載事項と虹彩情報を連結した膨大なデータベースができあがることになる。セキュリティの観点からは,このようなデータベースの存在を一概に否定することはできないが,他方,運用に関する明確な規準が無いことには懸念をいだかざるを得ない。

こういった分野に関する法律家の取組は,始まったばかりであり,しかも歩みは遅い。一方で,技術はどんどん進歩している。技術の進歩は歓迎だが,このようなニュースに接すると,法律家としては複雑な思いもある。(小林)

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