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2007年9月27日 (木)

電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン改訂について

総務省は,平成19年9月12日,「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン第26条の解説改訂版」を公表した。改訂の趣旨は,位置情報サービスの多様化やGPS機能付端末の普及を受け,位置情報サービスを提供する際に電気通信事業者が講じるべき「必要な処置」の内容を明確化したものとのことである。

位置情報サービスということなら,ユビキタスネットワークシステム(UNS)やネットワークロボット(NRT)にも大いに関係がある。そこでこの機会に,上記ガイドラインやその解説を勉強してみることにする。

ガイドライン26条1項には,利用者の同意なき限り,電気通信事業者が位置情報を他人に提供することを原則として禁止している。例えば,妻が浮気夫の居場所を突き止めるため夫の持つ携帯電話の位置情報を教えてもらうことはできない。また,会社がGPS付携帯電話の加入契約者であったとしても,これを持たせた営業社員に無断で居場所を知ることもできない(このガイドラインは「加入者」と「利用者」の概念を区別しているから)。例外としては,裁判所の令状がある場合が典型である。例えば,容疑者のアリバイ情報を確認するために位置情報履歴を提供してもらう場合がこれにあたる。その他緊急事態(誘拐被害者の居場所を突き止める,とか)などの違法性阻却事由がある場合にも同様である。このように,位置情報は,その端末を持つ利用者個人のプライバシー情報として,通信の秘密(電気通信事業法4条)に準じる強い保護が与えられるとされている。

ガイドライン26条2項は,電気通信事業者が位置情報を利用者ではなく,加入者に提供したり,第三者に提供させる場合には,利用者のプライバシー権が不当に侵害されたりしない処置を講じることを義務づけている。今回解説の改訂があったのは,この2項についてである。

必要な措置として,ガイドラインの解説は4つを列挙している。

第1は,利用者の具体的同意である。この同意は,その時々になされることが理想である。事前に同意を行ってもよいが,撤回できなければならないとされる。つまり,夫が「私はここにいますよ」という情報を妻に提供することを事前に同意することは可能であるが,愛人とホテルに行くときには,簡単な操作で,この同意が撤回できるようにしておかないといけない。

第2は,位置情報が提供されていることを,利用者に明示することである。明示の方法としては,「位置情報提供中」との表示を待受画面に表示する等が考えられる。先の浮気夫の例で言えば,「位置情報を妻に知られたくなければ携帯電話の電源を切ればいいじゃん」と思われるかもしれないが,愛人とホテルにいる浮気夫といえども,仕事上重要な電話が来るかもしれず(そうか?まあそういう場合もあるでしょう),常に携帯電話の電源を切ることはできない。この場合に「携帯電話」のサービスと「位置情報提供」のサービスを区別し,位置情報提供サービスだけいつでも停止できるようにしなさい,ということである。

第3は,権限のないものが位置情報をモニタリングしたり,不正な情報取得がないようにするための措置(暗証番号等のセキュリティ確保)や,電気通信事業者による不必要な位置情報取得の禁止である。これも,利用者の位置情報が不正に流出することを未然に防ぐための措置といえる。

第4は,電気通信事業者が第三者と提携して位置情報提供サービスを行う場合,第三者による不正が行われないように配慮し,不正があったときはその第三者への情報提供を遮断できるようにしておくことである。

上記ガイドライン26条は,位置情報が利用者のプライバシー情報であるとの認識に立つ限り,至極まっとうなものであり,今回の解説の改訂は,これをわかりやすく敷衍したものとして評価できる(実際のところ,改訂前の解説は,非常に分かりにくい)。

そしてこの考え方は,携帯電話端末を取り扱う電気通信事業者のみならず,将来は,ユビキタスネットワークのプロバイダなどに及ぼされていくことになるであろう。もっとも,その場合に新たな問題が生じるのか否かという点については,今後研究していく必要がある。(小林)

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