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2007年9月19日 (水)

PL法における「瑕疵の推定」について

PL法(製造物責任法)は,製造物に欠陥があるときに,製造者に損害賠償義務を負わせるが,この欠陥には「設計上の欠陥」と「製造上の欠陥」の2種類があるといわれている(もう一つ「指示警告上の欠陥」という概念があるが,これは製品そのものの欠陥ではないので,ここでは省く)。そして,私たち弁護士がメーカーの人に対して話をするとき,「欠陥」は「設計上の欠陥」を指すのが普通である。しかし,メーカーの担当者は,「欠陥」には「製造上の欠陥」もあるとい点を忘れないでいて欲しいと思う。

大阪地方裁判所平成6年3月29日判決は,テレビについて,「絶対安全が求められる」と指摘した。その趣旨は,包丁やアイロンなどは,ユーザーが誤った使い方をすればユーザー自身に危害が及ぶ製品であるが,テレビは,ユーザーが普通に使う限り,ユーザー自身に危害が及ぶことはあり得ない製品である,このような製品については,ユーザーが普通に使っているのに事故が起きた場合,ユーザーが「欠陥」を証明する必要はなく,「欠陥」の存在が推定される。「欠陥」の存在が推定される,ということは,「設計上の欠陥」または「製造上の欠陥」のどちらかが推定される,という意味だから,メーカー側が「設計上の欠陥はない」ことを立証するだけでは反論として不十分になる。幕の内弁当を食べたら食中毒になった,と訴えられたときに,「卵焼きは安全でした」と反論しても不十分なのだ。メーカーは,設計上の欠陥がないことのほかに,「製造上の欠陥もない」ことを立証しないといけない。そして,この立証は極めて困難である。

弁護士の話を聞きに来るメーカーの担当者は,たいがい設計部門の人だから,「安全設計さえ行えば大丈夫」と考えがちではないかと,時々心配になる。あるいは,メーカー側としては(特に日本のメーカーは),製造工程の管理には絶対の自信を持っているのかもしれない。また,品質管理のノウハウについて,弁護士から話を聞く必要はないと思っているのかもしれない。まことにごもっともである。しかし,グローバル化した部品調達の中では日本人の力量だけで製造工程を管理することは不可能であるし,日本人の「巧」としての製造技術の低下が指摘されて久しい。

そうであるとすれば,メーカー側には,設計段階において欠陥がないことと,製造過程においても欠陥がないこととの,両者を証明する万全の準備が求められることになる。そのためには,設計者には,基本設計のみで安全を追求するだけではなく,製造過程においても欠陥が生じないような設計や,仮に製造過程において多少の不良が生じても,製品全体としては危険が発生しないような設計が求められる。つまり,「安全設計」の意味は,「設計図通りに作れば安全な設計」という意味から,「設計図から多少違っても安全な設計」という意味に,変化しているということもできる。(小林)

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