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2007年9月 7日 (金)

光市母子殺害事件弁護団に対する懲戒請求について

光市母子殺害事件弁護団に対する懲戒請求が4000件近くに達しているという。平成19年9月5日には,この懲戒請求を扇動したとして,弁護団の一部が橋下徹弁護士に対して損害賠償請求訴訟を提起したと報道された。

私は報道されたレベルでしか事件を知らない。件の弁護団は,報道されていないレベルで,一部または全部無罪を勝ち取りうる優秀な弁護活動を展開しているかもしれないが,あくまで報道される範囲に限って言うと,疑問に思う点もある。被告人にとってあまりにリスクの大きい弁護活動を展開しているような気がする。この弁護活動を,いろいろな視点から批判することは基本的には自由である。しかし,批判することと懲戒請求を申し立てることは意味が違うし,橋下弁護士自らが懲戒請求するのではなく,マスメディアを通じて懲戒請求申立の「扇動」を行うことは,もっと意味が違う。今回弁護団が言うような扇動を橋下弁護士がしたとすれば,法的責任を免れないであろう。懲戒請求は自由にやって良いものではなく,不当な懲戒請求者には,損害賠償義務が発生するという最高裁判所の判決もある。今回懲戒請求を行った数千人は,弁護団に損害賠償金を支払うリスクを覚悟しないといけない(もっとも,その後の報道によれば,弁護団は懲戒請求者本人に対しては損害賠償を請求しない予定とのことである)。

ところで,面識もないし名前も知らないが,私が尊敬する弁護士の一人に,松本サリン事件で最初に被疑者となり,後に完全に濡れ衣であることが明らかになった人の代理人を務めた方がいる。この弁護士は,日本中が(もちろん私自身も)「あの人が犯人だ」と確信していた時期に,無実を釈明する記者会見を,現地の自宅兼事務所で行った。繰り返すが,この時点では,この人が無実になるとは限らなかったのである。もし警察が捜査方針を転換せず,それ以降もこの人を犯人と取り扱ったとき,この弁護士が日本中から激烈なバッシングにあったことは,想像に難くない。それほど大きなリスクがあるのに,自宅を記者会見場に設定した弁護士の勇気には,感服するしかない。弁護士には,このような種類の勇気が必要であると思う。

それならば光市事件弁護団の弁護方針を,勇気ある行動として私が賞賛するかと聞かれれば,そんなことはない。では,この弁護団と,松本サリン事件の弁護士と,どこが違うのかと問われても,よく分からない。たぶん,弁護士にとって勇気よりも大事なのは,真実を見通す眼力なのだろう。この眼力が間違っていると,弁護士本人にとっては勇気に基づく正義の行いであっても,はたから見たら茶番にすぎない,ということなのかもしれない。(小林)

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コメント

>この人が無実になるとは限らなかったのである。

この「限らなかった」というのはおかしくありませんか。
ここは、「誰も予想できなかった」がふさわしくはないでしょうか。

投稿: zih*s*uppan* | 2015年9月25日 (金) 15時19分

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