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2007年11月14日 (水)

装着型全方位ステレオ監視システムについて

大阪大学の八木康史教授が,「装着型全方位ステレオ監視システム」の研究をしておられる。これは要するに,路上に監視カメラを多数設置しても,死角は完全になくならないし,郊外など,監視カメラが設置されていない地域も残る。そこで,全方位監視カメラを個人個人が装着したらどうか,というアイデアに基づく研究であり,具体的イメージが動画で紹介されている。面白いので,是非ご覧下さい。

私の感想は,正直言って,「なんだかなあ」である。素人めいた感想にはなるが,できる限り法律家としての視点を保ちつつ,述べてみたい。

監視カメラ(防犯カメラ)の機能は大きく分けて二つある。一つは,犯罪を抑止する機能であり,二つ目は,犯罪を記録する機能である。この二つの機能は密接に関連している。つまり,防犯カメラは,犯罪を記録するからこそ,犯罪を抑止することができる。

そして,犯罪を抑止する機能は,そこに防犯カメラがあるということが表明されていなければならない。したがって,防犯カメラに犯罪抑止機能を発揮させるためには,「防犯カメラ撮影中」と目立つように表示させるか,または,カメラそれ自体を目立たせる必要がある。いずれにしても,「目立つ」ことが必要だ。そしてこの必要性は,ファッション性と真正面から対立する。ファッション性という観点からすれば,正直言って,このような監視カメラを頭のてっぺんに装着して市民が街を歩く時代が来るとは思えない。八木教授は,「研究者は携帯監視(技術)の確立に専念し,あとは,工業デザイナのセンスに期待するところである」(セキュリティ産業新聞546号)と述べておられるが,それは期待が過ぎるというものではないか。

次に,防犯カメラの犯罪記録機能についてである。この装置がどうやって影像を記録するかは不明だが,装着する個人が記録するか,無線LAN等の電波技術を使って影像をネットワークに飛ばして記録するかのいずれかであろう。しかし,前者(装着者本人が記録する場合)であるなら,犯罪者は犯罪遂行の前後に記録媒体を破壊すればよいのだから,防犯カメラの犯罪記録効果は無に帰する。これは同時に,犯罪抑止効果も無に帰するということである。また,後者(ネットワーク経由で影像を記録する場合)であるなら,電波が届かない場所では犯罪記録機能も,抑止機能も失われる,ということになる。つまり,郊外やトンネル・地下通路内では意味がない,ということだ。これでは,八木教授の当初の提案における問題解決にならない。

いうまでもなく,私が研究課題にしているプライバシー権との関係も大いに問題である。この「携帯する監視カメラ」は,公共の場所だけでなく,あらゆるプライベートな場所に携行することが可能であるから,盗撮カメラとして悪用する人間が必ず出てくるであろう。

というわけで,装着型全方位ステレオ監視システムについては,「なんだかなあ」と思う次第である。

もっとも,この記事を読みながら,私なりのアイデアが浮かんだので,技術者の方に研究して頂ければと思う。

私のアイデアは,「ライフレコーダー」というものだ。これは,最近のタクシーなどに装着されている「ドライブレコーダー」の「ドライブ」を「ライフ」に置き換えたものであり,その機能も「ドライブレコーダー」に似ている。その実体は数㎝×数㎜のチップであり,個人の頭蓋骨に埋め込んで,視神経と聴覚神経に接続しておく。このライフレコーダーは常時データを記録しつつ,上書き消去していくが,埋め込まれた個人の生命反応が消失した場合や,一定以上の重力加速度が記録された場合には,直近30秒間の視覚・聴覚記録を保存する,というものだ。つまり,死体の頭蓋骨からライフレコーダーを取り出して専用の機器で再生すると,その人が死亡する30秒前の画像と音声が再生される仕組みである。

馬鹿馬鹿しいですか?技術的・医学的には現時点では無理かもしれないが,実用性という点からすれば,八木教授の研究に比肩すると思うし,プライバシー権との関係でも問題はないのだが。少なくとも,SFミステリー小説や映画の題材にはなると思うので,どなたかこのアイデアを使ってください。私の名前をクレジットして頂ければ,アイデア料はいただきません。(小林)

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受信: 2007年11月16日 (金) 03時27分

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