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2007年11月22日 (木)

「見守りロボット実用化へ」のニュースについて(2)

子どもにICタグを持たせて登下校の位置情報を把握し親に通知する「街角見守りシステム」に対して,エンパワメント・センター主宰の森田ゆり氏は大反対の立場である。この問題は,法律的には,登下校時の行動・位置情報という子どものプライバシー権の問題として検討することができる。

「子どものプライバシー権だって?親が承諾しているのだから問題ないだろう。そもそも子どもにプライバシー権などあるのか?」と思われるかもしれない。確かに,親には子どもの権利や利益を処分する権限がある。しかし,親だからといって処分できない権利もある。例えば生命がそうだ。

それでは本件の場合問題になる子どものプライバシー権とは具体的に何か。語弊をおそれずに言えば,それは「道草の権利」とでも言うべきものである。「道草は権利なのか?」と思われるかもしれない。道草は子ども権利である。それは子どもにとって,とても重要なものだ。

道草をするのは,子どもの本能といってよい。子どもは,道草をする中で,いろいろなことを学ぶ。親の言いつけを破ったり,親の目を盗んで行動したりすることも,子どもの成長過程に不可欠の経験である。

もちろん,親は子どもに道草を禁じることができるし,道草を発見したら叱ることができる。これは親の権利でもあるし,義務でもある。しかし,親が子どもに道草を禁じることと,情報デバイスを通じて子どもの位置を把握し,道草の有無を常時チェックすることとは話が別だ。森田ゆり氏は,街角見守りシステムが子どもの成長過程に重大な悪影響を及ぼすとして,これに反対しているのである。

法律的にはどのように考えるべきだろうか。確かに,子どもには道草の権利と呼ぶべき重要な利益があることは認められよう。しかし,この権利も他の利益や必要性との調整が必要なときもある。街角見守りロボットの場合,問題となるのは子どもの安全という重要な利益であり,しかも,小学生には身の安全を守る能力が乏しいことや,塾や核家族・共働き夫婦の増加により,子どもが単独で行動したり夜間外出したりすることが増えているのも事実である。また,かつて存在した地域の力が,現代の多くの街で弱くなっていることも事実であろう。そうであるとすれば,小学生レベルの子どもについて,街角見守りシステムを導入することもやむを得ないと考える。

もちろんこれは法律論であり,「適法か,違法か」レベルの問題だ。「妥当か,妥当でないか」というレベルの問題は,教育のあり方を含め,別の議論が必要である。(小林)


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