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2007年11月 6日 (火)

ニューヨークのタクシー運転手のプライバシー感覚について

U. S. Front Lineのウェブニュースによると,ニューヨーク・タクシー労働者同盟が,全車両にGPS端末の搭載を義務づける市の計画に反対してストライキを行ったという。反対の理由として,運転手らは,居場所が特定される「プライバシーの侵害」や,導入に伴う経費の負担増に反発している,とのことである。

個人タクシーならともかく,タクシー会社の従業員であるタクシー運転手が,何故経費負担増に反対するのか,よく分からないが,それは取りあえず措いておく。ここで問題としたいのは,「プライバシーの侵害」という反対理由だ。

日本人の感覚としては,おそらく,タクシーにGPS端末を搭載することが,なぜ運転手の「プライバシーの侵害」になるのか,理解できないと思う。私も理解できない。効率的な配車のためには各タクシーの位置を会社が把握することは重要であるし,その手段としてタクシーにGPSを搭載するというのも有効な方法であろう。タクシーの運転手には,会社との雇用契約上,就業中の自分の位置情報を会社に通知する義務があると考えて良いと思う。もっとも,ニューヨークのタクシーには日本のような配車のシステムがなく,100%「流し」で営業しているのかもしれないが。

しかし,本稿で指摘したいのは,GPSの搭載が運転手の「プライバシーの侵害」になるという主張が正しいか否か,ではない。このような主張が堂々となされるという,運転手(というよりアメリカ人)のプライバシー感覚である。「GPS搭載はタクシー運転手のプライバシーを侵害する」という主張が,「ハァ?何言ってんだお前。ねぼけとるんちゃうか?」という箸にも棒にもかからないレベルではなく,(結果的に少数かもしれないが)それなりに支持されるレベルで成立する,というアメリカ人の感覚を,指摘しておきたいのだ。

一般的には,アメリカ人のプライバシー情報に関する権利意識は,日本人のそれより低いと言われている。街頭防犯カメラに対する人権意識も日本人より低いと言われるし,社会保障番号をたよりにネットで検索すると,その人の職歴や資産等のプライベートの事項が分かると言われているし,このような情報を売買する産業も成立している。しかし,そのような一般論が必ずしも常に妥当するわけではない,つまり,プライバシー情報に関する権利意識について,アメリカ人が常に日本人より低いわけではない,ということをこのニュースは教えてくれる。(小林)

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