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2007年11月10日 (土)

修習期は個人情報か

法曹界と芸能界には共通点が一つある。それは,年齢が上ではなく,業界経験年数が長い方が「エライ」という点だ。その業界経験年数を測る物差しを,法曹界では「修習期」という。この修習期とは,昭和22年,つまり戦後新たに発足した最高裁判所司法研修所の修習を終了した順につけられている。つまり戦後初の司法修習生が「1期」であり,私は平成4年修習終了の「44期」だ。現在は司法改革の端境期であり,一年に二つの司法修習が平行して行われているため,司法改革前の制度で修習した方を「旧60期」,新司法試験に合格した方を「新60期」という。「新」「旧」つけて区別してもややこしいと思わないほど,修習期の概念は法曹界に定着している。

修習期の便利な点はいくつかある。その一つはもちろん,修習期を聞いただけで,その人の法曹界での経験年数が簡単に分かる点だ。また,修習期の割に年齢が極端に若ければ相当優秀であるとか,その逆であれば司法試験でかなり苦労したか,あるいは他の職業経験があるな,ということが想像できる。そして,大変重宝することには,見ず知らずの相手でも,修習期を聞けば,共通の知り合いを容易に捜し出すことができる。「先生は何期ですか?」「○期です。」「それなら○○君をご存じではないですか。彼とはよく飲みに行くのですが」「○○君ならよく知っていますよ,研修所で同じクラスでした。よろしく伝えてください」という塩梅である。弁護士同士,共通の知り合いがいれば,一定の信頼関係ができるから,たとえ訴訟上敵同士でも,あまり下品な手は使わなくなるし,事件の妥当な解決点を捜すという作業もやりやすくなる。このように,修習期は,法曹界では大いに重宝される情報である。一般市民の方も,修習期を知ることにより,最低限,その弁護士の経験年数を知ることができる。

ところが最近,弁護士会内部では,修習期の情報は個人情報保護法上の個人情報に該当するから,本人の承諾なくして公開するべきではない,という意見が通説となっている。実際,日弁連のホームページでは,修習期の表示がなされていない。本来,既に述べたとおり修習期は市民に対して,弁護士の経験年数という重要な情報を示すものであり,また,弁護士同士においても,一定の信頼関係を構築するために重要な情報であって,当然,公開されるべきものである。しかし,「個人情報とは,…当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別することができるもの」という個人情報保護法上の定義からすれば,修習期も文言上,個人情報に該当すると解釈するのが素直ではある。だからといって,修習期情報を非公開とすることを,弁護士会は漫然と受け入れてよいのだろうか。個人情報保護法が悪いのか,弁護士会が硬直しすぎているのか,いずれにせよ,馬鹿げた話であると思う。(小林)

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