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2007年12月 2日 (日)

「見守りロボット実用化へ」のニュースについて(4)

小学生にICタグを所持させ,通学路のポイントを通過するたびに通過情報と通過児童の画像を学校や親に自動配信する「街角見守りロボット」を導入する際,保護者が,「子どもの画像がその親に配信されるのは差し支えないが,親でないほかの保護者に配信されるのはプライバシーの侵害だ」と主張することがあるようだ。「街角見守りロボット」をめぐる法律問題は,すでに述べてきたとおり何点かあるが,実際問題としては,このような親の主張にどう対応するか,という点が,業者や学校を悩ませているらしい。

確かに,「街角見守りロボット」のシステムからすれば,太郎君と花子さんが仲良く手をつないで「街角見守りロボット」の前を通過したとき,「手をつないで歩く太郎君と花子さん」の画像が太郎君の保護者と花子さんの保護者の両方に配信されることになる。双方の両親が知り合いであればともかく,見も知らぬ保護者に自分の子どもの画像が配信されることに抵抗感がある,という心理は理解できる。法律的に見ても,子どものプライバシー権は,保護者と学校に対してのみ放棄(公開)したのであって,同じ学校とはいえ赤の他人に対して放棄(公開)したのではない,という理屈は成り立つ。

しかし他方,すでに述べたように,このシステムは児童ではない一般通行人を承諾なく撮影するものであり,一定の条件の下で適法になるとはいえ,これを不愉快に思う市民もいよう。このような市民に対する思いやりもなく,自分の子どもの画像についてだけプライバシー権を主張するのはいかがなものか,という気もする。

そうすると,「街角見守りロボット」に守られるという恩恵を享受している子どもについて,他の保護者に画像を見られたくない,という意味でのプライバシー権は一応認められるものの,それは,一般通行人の有する同様のプライバシー権よりは劣る,と考えるべきだろう。平たく言い換えると,一般市民が撮影された画像を学校や親に配信されることを我慢しなければならないのであれば,児童やその親も我慢しなければだめ。他方,自動マスキングなどの「プライバシー保護技術」により,一般市民の画像が学校や親に配信されない手当がなされているのであれば,この技術を児童にも適用して,親にのみマスキングを外した児童の画像が配信されるようにしてもよい。しかし,一般市民のプライバシー権には何の配慮もせずに,児童の顔にだけマスキングするのは,不公平でだめ,ということになる。(小林)

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