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2008年1月 8日 (火)

自販機内蔵カメラで防犯

という記事が,平成20年1月7日の日本経済新聞に掲載されていた。群馬大学工学部(e自警ネットワーク研究会 会長・藤井雄作教授)と三国コカ・コーラボトリング群馬支社の共同開発で,市販の無線カメラを自販機に組み込み,前方の幅5メートルの範囲を24時間撮影し,人や車が通ったときだけパソコンに保存するとのことである。その目的は,「自販機荒らしを防ぐだけでなく,街頭での犯罪捜査にも役立つと見て」おり,「県警と協力して…2008年中の実用化を目指す」そうだ。

プライバシー保護に関しては,「映像は暗号化して保存し,事件などが起こった場合のみ警察など捜査機関が再生できるようにしてプライバシー保護機能を持たせた」とのことである。

これは囲み記事だから,藤井教授らの意に反する省略があるかもしれない。それ故の誤解であればご容赦頂きたいが,この人達は本当にプライバシーやセキュリティのことを考えているのかと思う。

このシステムは例えるなら,道のほうぼうにカメラを持った人が立っていて,その前を横切ると写真を撮られる,ということと同じである。「何で写真を撮るんだ」と問いかけると,「ご心配なく。ただ撮影しているだけで,事件などが起こったときに現像するだけですから。ついでといっては何ですが,私はジュースやお茶の販売もしています。買って行きませんか?」との答えが返ってくる。そう答えられたら読者は「ご苦労様です。犯罪捜査に役立つならどうぞ撮影してください。」と納得するだろうか。筆者なら不愉快に思う。「今撮影したこのとき犯罪は起こりましたか?起こっていないなら,撮影した画像は今削除してください」と答えたい。まして,その人からお茶を買う気など起きない。9.11同時多発テロの後,世界中の感覚が安心安全に触れていて,防犯や犯罪捜査のためといえば何でも許されるかのような風潮があるが,そういうときこそ,このような不愉快に思う気持ちは大事にしなければいけないと思う。

筆者のこの感覚は,おそらく筆者個人のものではない。大阪市で通学自動見守りのために自動販売機にビデオカメラを設置した実証実験が行われたが,カメラが設置された自動販売機は売上が下がったという噂がある。もしこの噂が本当なら,自動販売機に撮影されることを不愉快に思う気持ちは,決して極少数派ではない。確かに大阪での実証実験のときは,自動販売機にやたらごつい機材やアンテナが設置されていて,いかにも「撮影しています!」という感じだったが,だからといって,カメラを小型化すればよいというのはまやかしである。むしろ,街頭犯罪を抑止するなら,カメラはごつくて目立つほどよい。

セキュリティの面からも,無線小型カメラを使用するという点に疑問が残る。この無線の傍受や,ダミー画像の送信などについて,十分なセキュリティが施されているのだろうか。また,記事には「事件などが起こったときのみ」再生できるようにするとあるが,「事件など」の「など」とは何を指すのか。県警と共同実験をしているというが,それなら暗号を解読するパスワードは県警も持つことになるのか。少なくとも,復号の規準や手順について,事後検証の可能なルールは作成されるのか。

もちろん,自販機荒しという犯罪が相当程度発生している以上,これを防止するという目的は正当である。次に,カメラで自販機荒らしが防止できるかについては,やや疑問もあるが,あるとしておこう。しかし,自販機荒し防止を目的とする撮影は,その目的に必要な限度に限定されなければならない。その自販機に何の用もない,ただの通行人を全員撮影するのは行き過ぎだし,ただの通行人を全員撮影するなら,「後で使う可能性があるから」という理由だけでは全然足りないと思う。(小林)

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