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2008年1月 7日 (月)

電動リクライニングベッドに挟まれて幼児が窒息死

平成19年12月、日本の会社が輸入した中国製電動リクライニングベッドのマットとヘッドガードの間に4歳の幼児が首を挟まれて窒息死したとして、国民生活センターのホームページに掲載された。事故原因は調査中とのことであるが、親御さんは、事故を起こしたベッドは以前から、リモコンに少し振動が加わっただけで動いたことがあったとして、「リモコンの不具合がなければ事故は起きなかったはずだ」と主張している。

国民生活センターの現地調査によると、このベッドは「リモコン操作により頭部・脚部が電動で上昇・下降する機能を有する低価格(約4万円)の製品」であり、このリモコンには「上昇・下降のボタンがあるのみで、ベッド本体を含め入・切のスイッチはない。そのため、ベッド本体のコンセントを入れリモコンを操作するとすぐに作動してしまう」とのことであるが、親御さんの主張するような「不具合」があったか否かについては言及していない。

製造物責任法によれば、ベッドの欠陥により幼児が死亡したとなれば、このベッドの輸入業者は損害賠償責任を負う(製造者だけでなく、輸入者も法的責任を免れないのだ)。そこで、本件の場合、何が欠陥になりうるのかを検討してみる。

まず、親御さんの言うとおり、「少し振動が加わっただけで動く」ようなリモコンであった場合、これが欠陥に当たることに異論は無かろう。もっとも、弁護士として訴訟を念頭に置いて考えた場合、やや気になるのは、再現性があるか、という点だ。少し振動を加えただけで必ず動くというほどの再現性があればよいが、「動いたり、動かなかったり」ということも多い。リモコンの不具合に再現性がない場合、裁判所でリモコンの欠陥を証明することに一抹の不安が発生する。

次に、国民生活センターの現地調査報告にある、「(リモコンに)上昇・下降のボタンがあるのみで、ベッド本体を含め入・切のスイッチはない。そのため、ベッド本体のコンセントを入れリモコンを操作するとすぐに作動してしまう」点は欠陥となりうるか。この点は、欠陥ということはできないと思う。「入・切」のスイッチがあったとしても、本件事故を防げたとは思われないからだ。

最後に、国民生活センターの記事には一切触れられていないが、製品の本質安全を重視するリスクアセスメントの考え方を適用してみたらどうなるだろうか。危険源そのものの除去を第一義に考える本質安全の考え方からすれば、「マットとヘッドガードの間に首が挟まれる空隙が出現する」という危険源こそが重要となる。そして、この危険源を除去するためには、ヘッドガードを垂直方向に延ばして、マットを最大限上昇させても、マットヘッドガードとの間に空隙が出現しないようにすることが適切である。もちろん多少のコスト増は避けられないが、生命の危険に比べれば、取るに足らない。したがって、本件ベッドは、マットの上昇位置に比べ、ヘッドガードが低すぎたことが「欠陥」であることになる。

リスクアセスメントの考え方からこのとおりであると思うが、果たしてこの理屈が訴訟で通用するかとなると、直感的には、疑問である。現在強く提唱されているリスクアセスメントの考え方が、広く社会に受け入れられるためには、この考え方を裁判所も採用することが必要と思われるが、現時点では、乖離が存在することは否定できない。(小林)

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