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2008年2月11日 (月)

裁判員制度や被疑者国選、国選付添人等は弁護士の権益拡大か?

平成1928日の日弁連会長選挙の翌日、日経が法曹人口減に釘を刺す社説を掲載したのにつづき、翌10日、今度は毎日新聞が弁護士会に対して「司法改革を後退させぬように」と題した社説を掲載した。

悪意と誤解に満ちた日経の社説に比べ、毎日の社説はやや穏和である。釘を刺す、というニュアンスの日経に対し、毎日は注文をつける、という雰囲気だ。人口問題に対する弁護士の感情にも配慮を示し、司法改革を後退させるのでなければ、増員問題について多少ブレーキをかけてもいいですよ、と言っているようにも読める。

そうはいっても、毎日の社説に気になる部分も多い。

まず、「裁判員制度、被疑者弁護、刑事裁判での被害者の代理人、少年審判の国選付添人など新しい制度の導入によって、弁護士の出番が増えているのに、増員を抑制するのでは筋が通らない。既得権のパイを小さくしたくないとの発想に根差しているのなら、世論の納得は得られまい。」との下りである。「弁護士会が弁護士の出番を増やしたのに、これを支える人数を増やさないのは筋が通らない」という第1文も、「既得権に基づく増員反対ならば、世論に支持されない」という第2文も、それぞれごもっとも、というほかはない内容だが、理解できないのは、第1文と第2文との関係だ。

もしかすると、毎日社説氏は、「裁判員制度、被疑者弁護、刑事裁判での被害者の代理人、少年審判の国選付添人など新しい制度」は、弁護士の権益拡大だと考えているだろうか?「弁護士会は、裁判員制度など新しい制度を増やし、これを弁護士が独占することにより、既得権益を増やす一方、弁護士増を抑制して、弁護士1人あたりの分け前を増やそうとしている。」こういう主張をしたいのだろうか?それなら文意としては理解可能だが、そうであるとすれば、社説氏はとんでもない誤解をしているというほかはない。司法改革は、弁護士にとって赤字ビジネスの拡大でこそあれ、権益拡大などでは決してないのだ。

「既得権益の擁護」や「業界エゴ」は、マスコミが弁護士を批判したときに必ず出てくるキーワードである。これらが誤解に基づくものなら、日弁連は早急かつ強力に、こういった誤解を解くキャンペーンを行う必要があると思う。

次に、「弁護士への潜在的な需要はまだまだ多い。新人の就職難も、割の良い仕事を目指して大都市での開業に集中するせいで、地方に活躍の場を求めれば就職口は少なくない」との主張である。本当にそうだろうか?ただの思いこみではないのか?この点については、弁護士の中にも、これを科学的客観的に検証しようとしている人たちが現れ始めている。日弁連が国民に対して約束した司法改革のスケジュールを止めてはならないが、他方、どんな改革も検証が必要である。日弁連としては、司法改革のよって立つ理念の正当性や、適正な人口規模について、内部的な検討に着手するべきであろう。

なお、もう一点、上記とは全く別の話であるが、本日(211日)現在、日弁連会長選挙の結果を踏まえた社説を掲載した全国紙は日経と毎日だけであり、朝日・読売・産経は社説を掲載していない、という点は記憶にとどめておきたい。(小林)

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