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2008年2月28日 (木)

Yahoo!BB事件

平成18519日,大阪地方裁判所で,Yahoo!BBの個人情報流出による損害賠償請求事件の判決が出た。本稿では簡単に復習してみる。

本件は,メンテナンスのためリモートアクセス可能になっていた顧客情報を保管したサーバーが,メンテナンス業者従業員に不正アクセスを受けて情報が流出したものである。

第一の争点は,ソフトバンクに過失があったか否かであった。判決は,リモートアクセスを許していたこと自体の必要性は肯定したが,リモートアクセスを許す以上,不正アクセスを防止するための適切な措置を怠ったとして,過失を認めた。ユーザー名とパスワードが1年以上変更されていなかったというのだから,当然の判断といえよう。

第2の争点は,不正取得された個人情報は「住所,氏名,電話番号,メールアドレス,ヤフーID,ヤフーメールアドレス,申込日」の7種類であり,これらが個人情報に該当するとしても,プライバシー権の侵害として損害賠償の対象になるか,なるとしてその金額如何,であった。判決は,これらの情報が,秘匿されるべき必要性が高くないことを認めつつ,「本人が,自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されたくないと考えることは自然なことであり,そのことへの期待は保護されるべきであるから,これらの個人情報は,原告らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象になるというべきである。」として権利侵害を認め,一人当たり6000円(うち弁護士費用1000円)の損害賠償を認めた。

かつて「個人情報とプライバシー情報は同じか?」(1)(2)でも触れたが,個人情報とプライバシー情報は似て非なる概念である。個人情報が漏れてもプライバシー権の侵害はないと主張する学者もいるが,裁判例は基本的に,個人情報の流出について,プライバシー権の侵害を認めている。本判決が,端的に「プライバシー権」といわず,「プライバシーに係る情報として法的保護の対象になる」と,持って回った言い回しをしているのは,このような学問上の論争を踏まえ,今回漏洩した情報をプライバシー情報と断言はしませんよ,という断り書きの趣旨なのである。でも損害賠償は認めているのだから,学問上は有益な議論でも,現実問題としては決着しているともいえよう。(小林)

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