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2008年3月29日 (土)

日弁連はなぜ負けたのか? ~法曹一元とは何だったのか(11)~

法曹一元に対する日弁連の期待を背負って1999年(平成11年)7月に発足した司法制度改革審議会であったが,その審議の中で,法曹一元はどのように取り扱われたか。同審議会は,66回の審議中,「司法制度改革に向けてー論点整理」「中間報告」「最終報告」の三つの文書をとりまとめている。そこで,前例に倣い,三つの文書中,「法曹一元」という単語を検索してみよう。

まず,「司法制度改革に向けてー論点整理」中,法曹一元という単語は,10回用いられている。

次に,「中間報告」では,法曹一元という単語は,4回用いられている。

最後に,「最終報告」ではどうだろうか。

ゼロ,である。筆者も驚いて2回調べたが,「法曹一元」という単語は,ただの一回も用いられていない。司法制度改革審議会の最終報告書において,法曹一元という言葉は,抹殺されていたのである。

この最終報告に対する日弁連会長声明は,次のとおりである。

    当連合会が強く訴えてきた法曹一元に基づく裁判官制度の改革については、その理念に基づき、弁護士任官の推進、判事補の相当長期の多様な法律専門家としての他職経験、特例判事補制度の計画的・段階的解消、裁判官選考について国民も参加する推薦機関の設置、人事制度の非官僚化などを打ち出されたことは重要な意義をもつものです。

これはつまり,「法曹一元」という言葉は採用されなかったが,その「理念に基づく」いくつかの提言を積極的に評価する,という意味である。また,「法曹一元の理念である」という言葉を使わず,「法曹一元の理念に基づく」という,一歩引いた表現になっているのは,法曹一元にとって本質的な要素である判事補制度の廃止や,昇給・任地等に関する官僚的人事制度の廃止がほとんど含まれていないからであろう。最終報告書が採用されたのは,主として,裁判官に社会経験を積ませたり,弁護士任官を推進するなどして,「裁判官は世間知らず」という批判を回避するための方策に過ぎない。

司法制度改革審議会最終報告書における裁判官制度改革について,法曹一元の観点からどのように評価するかは,前述したとおり,事前の目標設定がなかったため,立場によって評価が分かれることとなった。裁判所におけるキャリアシステムと判事補制度が法曹一元の本質であるとの立場に基づくならば,上記最終報告書の内容は法曹一元論の完全な敗北と評価される。他方,裁判所に市民感覚を反映させるのが法曹一元論の趣旨と考える立場からすれば,上記最終報告書の内容は一定の前進と評価される。

現在,各単位会で,弁護士任官や,非常勤裁判官などの取り組みが行われている。しかし,2000年当時に存在したような,法曹一元に向けた熱気が見られないこともまた事実である。司法制度改革審議会の最終報告書が一度も「法曹一元」という言葉を使用しなかったことからしても,「法曹一元」という理想は,3度目の死を迎えたと見るべきだと思う。(小林)

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