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2008年3月 1日 (土)

日弁連はなぜ負けたのか? ~法曹一元とは何だったのか(4)~

日弁連が,司法試験合格者数年3000人を受け入れた2000年の臨時総会決議の決議文と提案理由の中で,42回という異常な回数に亘り言及した「法曹一元」とは何か。実は,この決議文や決議理由を読んでも,よく理解できない。この決議自体が,法曹一元の定義を,同年5月の定期総会決議に譲っているからだ。そこで,20005月の定期総会決議の決議文を見てみると,日弁連の言う法曹一元とは,次の内容である。

★「市民の司法」を担う裁判官は、人権感覚を身につけ、司法の救済を求める人々とともに裁かれる立場から幅広い経験を積んできた人から選ばれる必要があります。また、市民も参加する民主的選考手続を経た人が任命される制度にするべきです。さらに、昇任・昇給など官僚的な人事制度を伴わないものでなければなりません。このようにして、弱者に優しい心と権力にたじろがない勇気をもった裁判官を実現することが、私たちが求める法曹一元制です。

何を言っているか分かりますか?筆者にはよく分からない。裁判官のキャリアシステムを否定していることは分かるが,では誰が裁判官になるのかについて,この決議文は曖昧である。そこで,1968年の第19回定期総会・司法の民主化促進に関する決議の提案理由と比べてみる。

    司法制度を民主化し、これを真に国民のものとするためには、現行の裁判官任用制度を廃止しまして、多年国民の中にありまして、社会の表裏に通じ生きた社会経験と広い視野を有する弁護士から裁判官を任命する制度を実現することが、唯一の方策であると信ずるのであります。

ここでは,裁判官を弁護士から任命することが法曹一元であると明言している。法曹一元は,本来,弁護士から裁判官を任命することだったのだ。ところが,2000年の決議では,「弁護士から」という言葉が抜け落ち,「民主的手続きを経た人」に代わっている。また,2000年の決議では,官僚的な人事権が否定されている。

この違いを理解することは,法曹一元の概念を理解する上で有益である。法曹一元は,もともと,「世界の狭い職業裁判官より,社会の表裏を知った弁護士が裁判官になる方が民主的で,国民の利益になる」という,牧歌的な発想であった。この牧歌的法曹一元論は,「弁護士が裁判官になることがなぜ民主的なのか」という素朴な疑問に対抗できず,力を失う。その後,冷戦構造の中で,裁判所が左翼的と見なした裁判官の再任を拒否したり,昇級や転勤等で露骨な差別をしたりしたことから,在野性の強い弁護士を裁判官にするとともに,昇級・転勤等の人事権を裁判所から剥奪することこそ,司法の独立を,ひいては国民の人権を守ると考えられるようになる。そして,弁護士の裁判官任官に民主的基礎を与えるため,選任過程の民主化が必要とされたのである。

ところで,法曹一元の制度的根幹となるのが,判事補制の廃止である。裁判官は判事と判事補(裁判官に任官して10年未満の者)とからなるが,判事は通常,判事補から任命されていた。判事補は,裁判所に判事として採用してもらいたいから,どうしても「お上」の顔色を窺うようになり,それが個々の判決に反映することになる。このような理解から日弁連は,判事補から判事を任命する制度(判事補制度)が,官僚司法制度の中核であるとして,その廃止を求め続けてきた。つまり,法曹一元と,判事補制度の廃止は,表裏一体の関係にある。法曹一元の本質は,判事補制度の廃止にある。(小林)

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