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2008年4月24日 (木)

世界一安全な国を作る8つの宣言

平成20418日,自由民主党は「地域の絆を再生し,世界一安全な国へ~世界一安全な国を作る8つの宣言~を発表した。

この宣言によると,わが国の刑法犯認知件数は一時より低くなったとはいえ,いまだ昭和の安定期の1.4倍近くであり,国民の体感治安が依然として悪いことから,治安を維持する必要性は大きいとして,「地域の絆」再生をはじめとする8つの施策を提言している。

その中で,防犯カメラに関連する部分は,次の2点だ。

まず,「宣言1 防犯ボランティアを支援し,世界一安全な地域社会をつくります。」の中で,「街頭防犯カメラの設置拡充などを通じた犯罪に強いまちづくりの推進」として,街頭防犯カメラを整備促進する助成措置,個人住宅に対する防犯カメラ設置への助成,「個人のプライバシーにも配慮しつつ,防犯カメラの整備が図られるように,防犯カメラの設置・運用の在り方について検討する」とされている点だ。

次に,「宣言8 治安関係人員・予算を確保し,世界一安全な国を守ります。」の中で,「犯罪の痕跡の確実な記録による追跡可能性の確保」を挙げ,「ATM,コンビニエンスストア等に設置される防犯カメラ画像等における犯罪の痕跡を適切かつ確実に必要な期間保存し,捜査に活用できるように,個人情報の保護を理由とする捜査への非協力の解消を含め,電気通信事業者,金融機関等の適切な協力を確保するための取組を推進する」「自動車ナンバー自動読取システムを拡充する」とある点である。

すでに何回か指摘したとおり,防犯カメラシステムは相互不信の象徴であり,「地域の絆」とは基本的に相容れないものである。また,「プライバシーにも配慮しつつ」とあることと,「個人情報の保護を理由とする捜査への非協力の解消」とあることが,どう関係するかもよく分からない。このように,この自由民主党の提言は,あまり作り込まれていないという印象を受ける。

しかし,この提言の出来がどうであれ,街頭防犯カメラ設置の動きは拡大し続けるであろうし,犯罪捜査に対する防犯カメラシステムの寄与は高まるであろう。これは他方で,国民のプライバシー権や行動の自由に対する脅威が増すことを意味する。これを守るためには,街頭防犯カメラの設置を一定の条件の下で認めるガイドラインの策定が必要だろう。現在日弁連が策定しようとしているような,原則違法となるような厳しすぎるガイドラインでは,結果として,野放図な防犯カメラの蔓延を認めることになると思う。(小林)

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