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2008年5月24日 (土)

坂野真一先生へ

法科大学院志願者が4年連続して減少したのは,(旧制度に比べて)法曹の魅力が失われた証だとする坂野真一弁護士のブログについて,筆者から,「直感的には結論に賛成するけれども,論理的には飛躍がある」と指摘したところ,坂野弁護士から,丁寧なご意見をいただきました。

こういうことを書くと馴れ合いみたいだし,気持ち悪いから一回限りにしておきますが,坂野弁護士のブログでの文章は,優しいお人柄と誠実さがあふれていて,大変素晴らしく,大いに参考にしています。何より,実務家として現場の実感に基づく率直な見方をされている点に感銘を受けます。

その上での指摘だったつもりですが,理詰めで考えるくらいしか能がない人間なので,どうしても文章が冷たくなります。お気に障った点があればお許し下さい。

坂野弁護士にご理解頂いたとおり,新旧制度を比較するのはとても難しいから,法科大学院志望者が減少したことをもって,旧制度と比較して法曹の魅力が失われたとはいえない,というのが筆者の意見です。また,この点もご理解頂いているとおり,どうやって新旧制度を比較するのが正しいか,を追求することはおそらく無駄です(正直に告白すると,私自身,新旧制度を客観的に比較しようとエクセルで悪戦苦闘し,半日の徒労感に苛まれているとき,坂野弁護士のブログを読んだのでした)。

それならば,反対の意見を主張する人(例えば,法科大学院の定員一律削減を主張する某学者や,3000人に反対することは弁護士会のエゴだと主張するマスコミ)や,一般国民に対して,法曹人口増の問題点を,どうやって説得すればよいのでしょうか。

この点,坂野弁護士は筆者の考えをやや誤解されているように思います。私は,論理的主張であれば説得できるとは考えませんし,論理的主張をするべきであるとも考えません。むしろ,論理的主張は逆効果である可能性が高いとさえ考えます。なぜなら,法曹人口問題は政治問題であって,裁判ではないからです。裁判なら論理は多少の武器になりますが,政治問題では論理は時として有害でさえあります。何より,論理的説得で物事が解決するなら,弁護士会の諸先輩が法曹人口問題をもっとまともに処理していたはずです。

熱心にやればやるほど赤字になる公益活動の実態も見もせず,過疎遍在問題と法曹人口問題の関係を勉強もせず,ただエゴだエゴだとわめくマスコミに,坂野弁護士も時々反論されていますが,とても虚しく思っておられるはずです。なぜここまで,話が通じなくなってしまったのでしょうか。論理的に順序立てて説明すれば,彼らは分かってくれるのでしょうか。私はそうは思いません。別のやり方しかないのだろうと,漠然と感じています。

話は飛びますが,オバマ候補が政治家として優れているのは,複雑な問題を解決する糸口を把握する能力に秀でているからだ,という論評を読んだことがあります。ニューオリンズ洪水被害のポイントは,人種差別問題ではなく,経済格差問題であると端的に指摘したことが,その一例として挙げられていました。

法曹人口問題で,説得的な主張を行うために必要な能力は,おそらく,オバマ候補のそれなのだと思います。それは,論理的主張である必要はありませんが,論理的に飛躍した主張であってはいけません。論理的に飛躍した主張は,他論者の飛躍した主張との水掛け論しかもたらさないからです。格好をつけて,意味不明の言い方をするなら,「論理と非論理を超越したところにある何か」を指摘することが重要なのだと考えます。「弁護士である以上,論理的に飛躍した主張をするべきではないが,弁護士だからといって,論理に頼った主張をしてもいけない」と言い換えてもいいかもしれません。いよいよ訳が分かりませんが。

私は,法曹人口問題解決の糸口を見つけるためには,まず,この問題の歴史的経緯を学ぶことが必要だと考えますが,学んだからといって,直ちに解決の糸口が見つかるはずもありません。私のつたない文章が,坂野弁護士をはじめとする有能な方々にとって,問題解決の糸口を見つける助けになれば,望外の喜びです。(小林)

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