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2008年5月 2日 (金)

セキュリティポッドは監視社会の夢を見るか? ~伊坂幸太郎著「ゴールデンスランバー」を読んで~

伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」を読んだ。作者は大学の後輩で,舞台は郷里の仙台,ハイテク監視社会がテーマとあれば,立場上,読まないわけにいかない。

首相暗殺の濡れ衣を着せられた平凡なもと宅配ドライバーが,ハイテク監視社会となった仙台市を逃げ回るお話である。

第5回本屋大賞を受賞しただけあって,ハイテク監視社会の描き方にも,とてもリアリティがある。舞台では,R2-D2みたいな形をしたセキュリティポッドと呼ばれる監視装置が街中に設置され,通行人を24時間撮影するほか,肉声や携帯電話の電波も傍受する。セキュリティポッドが設置されたきっかけは,通り魔事件の頻発だが,それは口実に過ぎなかったという設定にも,実社会に通じる現実味がある。しかし,ハイテク監視装置といえども,機械的な限界があるし,運用したりメンテナンスするのは人間だ。組織としては恐ろしい公安警察も,一人一人は勤勉で実直な普通のおじさんである。運用するのが人間である以上,人間の力で立ち向かうこともできる。

ゴールデンスランバーとは,ビートルズ晩年の曲。すでにバラバラになったメンバーが別々に作った曲を,ポール・マッカートニーがメドレーにして,最後に「昔は故郷に帰る道があった」と歌う。主人公はポールと重ね合わせて,今の自分はひとりぼっちだと考えている。しかし,馬鹿げた大学生活を一緒に過ごした友人や,主人公の平凡な優しさに飽きて別れた恋人が,命をかけて監視装置を出し抜き,主人公を救おうとする。つまるところこの小説は,監視社会を支える人間のネットワークに,青春の記憶で結ばれた人間のネットワークが立ち向かうお話である。

読後感はとても爽やか。是非ご一読をおすすめしたい。(小林)

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