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2008年6月13日 (金)

品質管理と情報管理~不二家事件より(1)

シュークリームの原料に「消費期限切れ」牛乳を使用していたことが報道されたことに端を発する一連の不二家事件に関し,株式会社不二家から依頼を受けた郷原信郎弁護士ら5人の有識者が,平成19330日,「信頼回復対策会議最終報告書」という意見書をまとめた。平易かつ力強い言葉でまとめられたこの意見書は,弁護士を含め,コンプライアンスを考える者にとって必読の文献だと思う。

意見書によれば,一連の事件で不二家が甚大な打撃を被った原因は,同族会社の硬直性と社内意思疎通の悪さを背景に,社長の独断で選んだ外部コンサルタント会社の作成した不必要にセンセーショナルな報告書が社外に流出したこと,これを知った対応の遅れと誤り,捏造に近い誤報を重ねたマスコミにあるとしている。

この意見書の個々の論点については,それぞれ正当な指摘だと思う。ただ,以前から,何回読んでも,何となくしっくり来ないという,漠然とした違和感を覚えていたのも事実である。意見書の標記に不統一が見られることから,起案を分担して合体したようであり,そのせいで全体の印象が多少散漫になったのかもしれないと思っていたが,そうでもないような気がしてきた。以下一つの試論を述べる。

意見書によれば,コンサルタント会社が消費期限切れ原料牛乳の使用を指摘したのは平成181113日(事件が報道される約2ヶ月前)の社内会議の席上である。これに対して経営陣は,事実確認を優先するよう指示し,1129日,品質保証部による工場の抜き打ち検査が行われた。また,1115日には,問題とされた工場を含む全工場に,品質管理体制の徹底とコンプライアンス遵守が指示されている。意見書は,「事実公表を行わず,原因究明も問題の根本的な解決も行わず,『遵守指示』だけを行ったという,この時点での不二家の対応は,全く過ったものと言わざるを得ない」としている。

そうだろうか。少なくとも,これでは,意見を言われた不二家側としては,「じゃあどうすればよかったのですか?」と思っただろう。大事なのは,間違っていたと指摘することより,どうすればよかったかを指摘することだ。

いささか乱暴な試論かもしれないが,筆者としては,「消費期限切れ牛乳の使用」「雪印の二の舞」というセンセーショナルな指摘があった時点で,品質の確認作業とは全然別個に,この情報そのものに対する対応をするべきであったと考える。言い換えれば,「品質管理」と「情報管理」を混同したのが間違いであり,当時の不二家としては,「品質管理」を行うことはもちろん,「情報管理」をすべきであったのに,「品質管理」だけを行い,「情報管理」を行わなかったのが,最大の問題であると考える。つまり,「品質」と「品質(に関する)情報」は,似て非なるものだということだ。もっと平たく言い換えるなら「品質情報」は「品質そのもの」とは別に,「独り歩きをする」ということだ。

不二家事件が明るみに出た発端は,「消費期限切れ牛乳の使用」という「品質情報」が,社外に流出したことにある。これが,「品質情報は独り歩きをする」ということだ。

ちなみに,「独り歩きする」パワーは,情報の価値に比例して高くなる。つまり,報道価値の高い情報ほど,腕白な五歳男児のように,目を離すとどこに行くか分からなくなる。不二家の場合,その前の雪印事件で醸成された「食の信頼崩壊」という社会情勢や,不必要にセンセーショナルな報告書の体裁が,情報の価値を飛躍的に高めていた。(小林)

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