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2008年6月19日 (木)

弁護士人口を増加させたい財界の目的は?(2)

弁護士人口を増加させたい財界の目的は,弁護士費用を安くすることにはない。弁護士人口が増えれば,むしろ,財界の優良企業が支払う弁護士費用の総額は間違いなく増加する,と筆者は書いた。

筆者は経済の専門家ではないから,この見解にそれほど自信があるわけではないが,仮に筆者の見解が正しいとして,弁護士から,次のような反論がありうる。「なるほどお前の言うとおりかもしれない。しかし,庶民相手の定型的事件で喰っている私のような町弁の収入はやはり減るのではないか?」

それはたぶんそうなるだろう。だから,筆者の事務所を含む庶民相手の定型的な事件を主として取り扱う事務所は,薄利多売を指向しなければいけなくなる。そして,薄利多売を実現するためには,1事件あたりのコストを大幅に軽減しないといけない。

ここで問題が発生する。なぜなら,法律事務所を経営するについて,最大のコストは,事務所の家賃でも事務員の給料でもなく,弁護士自身の労働時間だからである。平たく言えば,現在の一般的な法律事務所の職務体勢では,弁護士自身がやらなければならないことが多すぎる。裁判所には弁護士自身が行かなければならない,打ち合わせや書面作成も,弁護士自身がしなければならない。一日が24時間である以上,どんなに事務処理能力の高い弁護士であっても,自分自身の労働時間を今以上に切りつめる(=1事件あたりに費やす時間を減らす)ことは極めて困難である。

現在,弁護士は,イソ弁を安く雇用することによって,自分の労働コストを切り下げていると思われる。しかしイソ弁の給料を安くすると言っても,もう限界である。そこで,このまま弁護士人口増が続く限り,将来的には,今まで弁護士が自分の体と脳みそを使ってやっていた仕事を,弁護士以外の人間に遂行させるようにならざるを得ない。出廷や,打ち合わせや,書面作成を,弁護士以外の法律事務所職員にやらせることになる。このようなやり方は,実は,司法書士事務所や税理士事務所が,普通に行っていることだ。一般には余り知られていないのかもしれないが,司法書士事務所や税理士事務所においては,司法書士や税理士の資格を有する経営者の他に,無資格者が雇用されており,この無資格者が事実上,資格者と同じ仕事をしている。つまり,定型的な業務を中心とする弁護士の業態は,司法書士や税理士の業態に近づくということであり,このように考えると,経済原理としては,当然のことのように思える。実際,自己破産や債務整理に特化した法律事務所は,弁護士一人あたり10人以上の事務員を雇用し,法律上許される範囲であるが,一般の弁護士が自分でやっている仕事を事務員にやらせている。もちろん,それが国家社会にとって良いことなのか,悪いことなのかは別問題である。弁護士が非弁護士に弁護士が行うべき仕事をさせることは,現在の法律では禁止されている。しかし,今般の法曹人口大幅増員を決定した国家の意思は,この方向を自ら選び取ったことに間違いない。(小林)

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