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2008年6月18日 (水)

日弁連はなぜ負けたのか? 中間まとめ(2)

法曹人口問題を巡る1989年(平成元年)から2000年(平成12年)までの歴史を振り返るとき,これをまとめると,どういうことになるのだろう。

この一連の経緯は,組織としての日弁連が,内部分裂して当事者能力と社会の信頼を喪失する1997年(平成9年)ころまでの過程と,執行部が強力なリーダーシップを持つことによって当事者能力を回復する2000年(平成12年)までの過程として見ることができる。

この過程は,日弁連という,強制加入団体であり,もともとさまざまな立場や考えを持つ弁護士の寄せ集めが,戦後50年間の長いまどろみの後,法曹人口問題という黒船によって開国派と攘夷派よろしく分裂したときに,団体としての一体性を回復する唯一の選択であったと思う。そして,この執行部は,弁護士会の相対多数によって民主的に選出されたものであるから,弁護士会と会員は,執行部の意思決定の結果について,良きにしろ悪しきにしろ,対外的にはこれを引き受ける責任を負う。それが社会のルールというものだ。高山俊吉弁護士や一条の会に代表される弁護士の最大の誤りは,このルールを真っ向から否定している点である。それは,日弁連が社会の信用を失うことであり,日弁連の団体としての一体性を喪失させることである。

他方,この一連の過程が日弁連にとってとても不幸であったことは,強力なリーダーシップを得て執行部が取り組んだ2000年までの過程が,敗北に終わった点だ。この点については,「一連の司法改革に成功した」と積極的に評価する意見もあるが,当時の日弁連が究極かつ第一の目標に掲げた「法曹一元」において完敗を喫した以上,全体的な評価としては,間違いなく敗北である。しかも,その負け方は,惜敗ではなく,かなり恥ずかしく,みっともない負け方であった。江田五月現参議院議長の言葉を借りれば,自分が言っていることが正しい以上これが通るはずだと信じて猪突猛進し,貧弱な戦術しか持たないのに,過大な戦略目標を追求したのである。結局のところ,当時の日弁連執行部はアマチュアであり,プロを相手に,無謀な戦いを挑んだのだ。

2000年(平成12年)までの日弁連執行部の取り組み自体は,大いに非難に値するし,非難されるべきであると思う。それは,個人の責任を追求するためでなく,我々が未来において同じ過ちを繰り返さないために必要だからだ。

しかし,筆者としては,それよりも重大な日弁連執行部の過ちを指摘しなければならない。それは,日弁連執行部が,「敗北した」という事実をひた隠しにして,これを認めてこなかったことである。何よりもこの点が,現在に至る分裂と混乱の原因である。

日弁連は負けたのだ。それなのに,多くの弁護士,特に若手は,日弁連が負けたという歴史的事実を知らない。だから,なぜ負けたかを学ぶこともないし,過去の教訓を未来に生かそうという発想も持てない。多くの若手は,目の前に突きつけられた「司法改革」と「3000人」と「法科大学院」の関係を理解できず右往左往しているが,その責任は専ら,「日弁連は負けた」という事実をひた隠しにしてきた日弁連執行部にある。今までの日弁連執行部は,歴史を未来に受け継ぐという重大な責務を放棄した点において,最大の非難に値する。

「日弁連はなぜ負けたのか?」という標題で半年にわたり,駄文を書き連ねてきたが,この標題の趣旨はなにより,日弁連が負けたことは当然の前提ですよ,という点をアピールする点にあった。もちろん書き始めた時点では筆者の直感に過ぎなかったが,現時点では,確信に変わった。何回でも繰り返すが,日弁連は負けたのだ。それもかなり無惨で恥ずかしい負け方をしたのだ。この事実を正面から受け止めない限り,弁護士の未来を語ることはできない。

もっとも,「その逆は真か?」と問われても,すなわち,「敗北の事実を真正面から受け止めれば,未来は開けるのか?」と問われても,答えることはできない。むしろ,この半年間勉強してみて,筆者はとても絶望的な気持ちになっている。というのは,これだけ愚かで稚拙な戦を戦って敗北した日弁連であるが,その執行部を構成し支えた弁護士1人ひとりは,とても有能な実力者だからである。日本の「ベスト&ブライテスト」と言ったら言い過ぎかもしれないが,当時の弁護士会の最優秀な頭脳と実力を集めてもなおこの体たらく,という事実は,先の日弁連の敗北の原因が,個人の資質にあるのではなく,弁護士会の組織としての本質的欠陥にあることを示唆していると思う。もしそうであるとすれば,過去を真正面から受け止めたところで,弁護士会に未来は開けない。(小林)

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