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2008年6月17日 (火)

品質管理と情報管理(2)

「品質情報」は,「品質」とは別に独り歩きする。価値の高い情報ほど,独り歩きのパワーは高い。だから,「消費期限切れ牛乳の使用」という価値の高い情報に接した不二家経営者は,「品質管理」にのみ目を向けず,「情報管理」に目を向けなければいけなかった,というのが,筆者の試論である。

それでは,不二家の経営陣は,どうすればよかったのか。第一に,コンサルタント会社が作成した不必要にセンセーショナルな品質情報が,その内容と体裁とによって,極めて高い情報価値を持つ,ということに気づくべきだったのだ。従って,経営陣としては,会議で配付された資料を,その場で回収するべきであった。実際には,回収完了は翌日にずれ込み,この間密かにとられたコピーが外部に流出したのである。

こう書くと,まるで情報の隠蔽を勧めているようであるが,そうではない。誤解しないで頂きたいのは,資料を回収したところで,情報は無くならない,という点だ。回収した資料といえども社内外のどこかに保管されているはずだし,仮に全て焼却して地球上から抹殺しても,人間の頭の中に情報は残る。つまり情報は不死不滅なのである。だから,不二家経営陣は資料の回収をするべきであったが,それだけでは足りない。情報が不滅であり,かつ価値が極めて高い情報である以上,いつか漏れることを前提に,次の手を打たなければならない。

それでは,資料を回収した後,経営陣は何をするべきであったか。それは,情報の価値を減殺することであった。既に指摘したように,情報の価値を増大させるものもあるなら,減殺させるものもある。情報は実体と離れて独り歩きすると言ったが,もちろん実体と無関係ではない。したがって,例えば,「品質管理情報が間違いである」との情報は,情報価値を減殺する。品質情報が正しかったとしても,適切な対応策をとったとか,社内基準には違反したが消費者の健康には全く影響がないことを証明する情報とかは,先の情報価値を減殺する。マスコミに漏れる前に,プレスコールを行うことも,情報価値減殺効果が高い。経営陣は,このような情報減殺行為を準備しておくべきだったのだ。

なるほど,当時の不二家の経営陣は,「消費期限切れ牛乳の使用」という情報に接したとき,事実確認を指示しているし,その2週間後に,工場に対して抜き打ち検査を実施している。これらの行為は,間違いではない。しかし,「情報管理」の観点から見るとき,これらの行為を指示した経営陣の目的は「品質管理」にのみ向いており,「情報管理」に向いていなかった。これが,不二家にとって,とても深刻な事態を引き起こした原因と考える。

さて,このような視点から不二家問題を概観するとき,不二家経営陣は,どういう体制をとっていれば,報告書の情報価値の高さに気づくことができたのだろう。それは,常に情報の価値を評価する体制をとっておけばよかった,ということになる。ここで大事なのは,情報の価値を評価するのがいつであるか,という点だ。言うまでもなく,マスコミに漏れた時点では遅すぎる。部署を問わず,社内に情報が発生した時点で,これを評価する体制が理想である。例えば,「部課長クラスは,RAI(Red Alert Information)に接したときは,必ずこの情報を情報管理部に通知すること」という内規を定め,情報管理部において,RAIの判断基準や対応体制を事前に決めておく,という体制である。

このように,不二家事件は,「情報管理」の失敗という観点から分析すれば,より理解しやすいし,役にも立つと思う。(小林)

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