監視カメラを利用したPV
Telegraph.co.ukの記事によると,イギリスマンチェスターのアマチュアバンド「The Get Out Clause」は,カメラマンと機材を用意する予算がないので,イギリスの道路のそこら中にあるカメラを使うことを思いついた。つまり,監視カメラの前で演奏を行い,その映像でPVを作成しようということである。イギリスには1300万台の路上監視カメラがあるので,ロケハンには苦労しなかった。このバンドは,マンチェスター市内の80もの場所で演奏を行った。その中には何と,バスも含まれていた。そして彼らは,情報自由法に基づいて映像の提供を請求したところ,約4分の1の監視カメラ運用者から映像の提供を受け,これを編集してPVを作成した,とのことである。
何ともたくましいブリテン野郎だが,監視カメラの法律問題としてみると,この顛末にはいくつか注目するべき点がある。
まず何と言っても,イギリスの監視カメラが1300万台という情報だ。筆者の最新の情報では500万台だったのに,あっという間に二倍以上に増えたことになる。
次に,監視カメラに写った本人が,その映像公開を請求する権利を有し,4分の1とはいえ,その実効性が認められたことだ。日本には,監視カメラに写った人がその映像を公開する権利があるとは,少なくとも一般には解されていない。しかし,世界的に見ても,日本の情報法の考え方に照らしても,監視カメラに写った人の映像開示請求権は認められる方向に進むことは間違いない。日本の監視カメラの運用者は,このような請求に耐えられるだろうか。
最後に,このPVを見る限り,バンドメンバー以外の一般市民の映像は,おおむね,適切に処理されて,誰が写っているかが分からないように処理されている,ということが注目される。このブリテン野郎は,案外繊細にプライバシー権に配慮していることが分かる。もっとも,マンションのベランダに佇む家族の映像は,プライバシーの観点からは問題があると思われるが,画角(下からあおって撮っている)や解像度を見ると,この映像に限っては,監視カメラの画像ではなく,映っている人たちは俳優なのかもしれない。(小林)
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