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2008年7月19日 (土)

ダスキン事件を振り返る(4)

以上,ダスキン事件を,食の安全とコンプライアンスの視点から振り返ってみた。では,当時のダスキン幹部としては,結局,どうすれば良かったのだろうか。実は,この点については,事件の真相が何だったのか,という検討をせずに語ることはできない。

筆者は先に「これ以上立ち入らない」と書いたものの,ダスキン事件を振り返ると,「実際に起きた事実(つまり神様が見た事実)」と,「ダスキンが会社として発表した事実」と,「訴訟でダスキンないし取締役が主張した事実」との間にズレがあり,それが,事件のわかりにくさに輪をかけているような気がしてならない。

「当時ダスキンにはかなり深刻な派閥抗争があった」という筆者のカンが正しいと仮定するならば,A社の製造する肉まんに無認可添加物が使用されていたことは,かなり早期から,社内の特定の部署では「公然の秘密」となっていたのではないかと思う。そして,それまで肉まんなど作ったこともないC社が参入に名乗りを上げたこと,誰かがC社社長に無認可添加物使用の事実を耳打ちしたこと,その後のダスキンがC社社長に「口止め料」を払った役員を処分しC社との契約を切ったこと,あえて「口止め料」と言う言葉を使って記者発表したこと,などは,すべて一方派閥の描いた絵である可能性があるし,他方,無認可添加物使用の告発は,他方派閥(またはC社)の逆襲である可能性が否定できない。また,件の取締役会で,無認可添加物の使用を「積極的には公表しない」と決定した,という点も,「積極的には公表しない」という言葉を使用した点において(裁判所がこの言葉に敏感に反応するとは想定していなかった点において),株主代表訴訟における取締役側弁護士のミスである可能性もあると思う。実際には,件の取締役会では無認可添加物の使用に関する対応は,もっと前に,もう少しきちんと検討されていたが,その内容は,「諸般の事情」により,裁判で主張するわけにはいかなかったのではないかと邪推する。

いずれにせよ重要なことは,ダスキン事件については,不祥事を知った幹部社員または取締役が法律的に適切な対応を取らなかったのは,自らの社内的地位の保全のためであった,ということである。コンプライアンスやCSRの教科書にはよく,「会社の利益のためではなく,社会の利益を考えて行動しなさい。それが結局は会社の利益です。」と書かれているが,人間の行動原理の中には,会社の利益のほか,本人の利益という重要なものがあることを,この事件は教えている。(小林)

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