« 「法曹人口問題に関する提言」の日弁連執行部の原案 | トップページ | 公共空間での撮影と画像の利用について »

2008年7月 7日 (月)

ダスキン事件を振り返る(1)

ダスキン事件とは,清掃用品レンタル最大手のダスキンが全国展開するファーストフード店「ミスタードーナツ」において2000年(平成12年)4月から12月にかけて販売された肉まんに,無認可の添加物TBHQが使用されていた,と報道されたことをきっかけとする一連の騒動である。

この事件も,食品の安全・安心を語るとき,避けて通ることができない重要事件である。ただ,他の著名な事件に比べ,論点が多岐に亘るうえ,真相が薮の中,と思える部分もあって,とても分かりにくい。

わかりにくいときは,当事者に争いのない事実から押さえていくのが,法律実務家の王道だ。

当事者に争いのない事実は,こうである。当時ダスキンが販売していた肉まんは,AB2業者が製造していたが,第三の業者に名乗りを上げたC社の社長が,A社の製造する肉まんに,TBHQが含まれている,とダスキン幹部に告げた。2人の取締役は,無認可添加物の使用を知りつつ,その後約3週間,肉まんの販売を継続させた。また,C社には合計6300万円の現金を支払い,かつ,第三の業者として肉まんの製造を委託した。他の11名の取締役がこの事実を知ったのは,TBHQを含む肉まんが全て販売された後であった。ダスキンは翌2001年(平成13年)夏ころから内部調査を開始し,責任者を処分するとともに,同年末をもってC社との契約も一方的に解消する。ここまではほぼ内密裡に進行したが,2002年(平成14年)39日,C社がダスキンを相手に契約破棄の撤回を求める訴訟を起こし,さらに515日,保健所が匿名の通報を受けてミスタードーナツ8店舗に立ち入り検査を行い,これを嗅ぎ付けた共同通信社がダスキンに取材を行ったため,521日,ダスキン自ら事件を公表した。この時点で既に1300万個,2人の取締役が事実を知ったとされるときからでも,300万個の肉まんが消費されていた。

TBHQというのは,酸化防止剤の一種であり,日本では食品添加物としての使用を認められていない(使用すると食品衛生法62項違反になる)が,アメリカなど十数カ国では使用が認められている。発ガン性を指摘する見解もあるが,多量に摂取しないかぎり,危険はないとされている。つまり,ダスキン事件の最大のポイントは,形式的には明白な法律違反だが,実質的には食の安全に無関係,という点である。実際,1300万個も売れたのに,健康被害は1件も出ていない。

事件の経緯を振り返るときとても奇妙に思われるのは,それまで肉まんを製造したこともないC社がダスキンの取引業者に参入しようとすることも不思議なら(実際,製造に着手した後も,技術的に相当稚拙だったことが窺える),そのようなC社の社長が,競合するA社の製品に無認可の添加物が使用されたことを知ったというのも不思議だし,C社の社長から聞くまでの間,担当者が事実を知らなかったというのも不思議である。これは筆者のカンであるが,当時のダスキン中枢部に,かなり深刻な紛争(要するに派閥抗争ですね)があったと見られるし,担当者も,C社社長に聞く以前から,無認可添加物の使用を知っていた可能性がある。しかし本稿の主題をやや外れるから,一旦措くことにする。

検討したいのは,無認可添加物の使用を知った平成12年末から事件を公表する平成145月までの1年半,組織としてのダスキンの行動に,コンプライアンスないし食の安全上,どのような問題があったのか,という点である。この点については,当初から事実を知っていた(とされる)二人の取締役と,肉まんが全て販売された後に事実を知った(とされる)残りの取締役とに分けて考える必要がある。(小林)

|

« 「法曹人口問題に関する提言」の日弁連執行部の原案 | トップページ | 公共空間での撮影と画像の利用について »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/192469/41517461

この記事へのトラックバック一覧です: ダスキン事件を振り返る(1):

« 「法曹人口問題に関する提言」の日弁連執行部の原案 | トップページ | 公共空間での撮影と画像の利用について »