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2008年7月14日 (月)

「なぜ企業不祥事は,なくならないのか」を読んで

國廣正,五味祐子弁護士著の「なぜ企業不祥事は,なくならないのか」(日本経済新聞出版社,2005年)を読んだ。

筆者の國廣弁護士は,「社員は悪くありません!」と社長が絶叫た山一証券が破綻した後,社員有志によって自主的に作成された「社内調査報告書」(1998416日)に関与し,その後,企業コンプライアンスやCSRの普及のため,積極的に活動しておられる,この分野の第一人者である。

この本で特に感心するのは,話がとても具体的な点だ。山一証券の「飛ばし」事件や日本ハムの「牛肉偽装」事件,東京電力の「原発事故隠し」事件など,実例に則した提言は,法律家以外の読者をも全く飽きさせないだろう。実例がまだ無い(というか,まだ表沙汰になっていない)事案については,具体的な設例とシミュレーションでカバーし,コンプライアンス担当者が「何をするべきか」を説得的に論じている。

著者は,「危機管理に魔法の妙薬はない。不断に行うリスク分析こそが,企業破綻を回避する唯一の方法である。問題の先送りは破滅をもたらす」と主張する。そして,「あなたの周りに,いまだに次のような発言をする上司が幅をきかせていないだろうか」と問う。

「危機は,今,そこに存在している。先送りは危険だというキミの意見にも一理ある。私もちゃんと分かっているんだよ」「しかし,まだ燃え上がっているわけではない。何も今,『事を荒立てる』必要はないではないか。状況が好転する兆しもないわけではないし…」「いや,何も私はこの問題を軽視しているわけではない。その重要性は十分に認識している。しかし,今は時期が悪いよ」「もう少し,慎重に『事態の推移を見守る』ことが必要だ」「それともキミには,今,この問題を一気に解決する妙案でもあるのかね?」

いるいる。このような上司は,筆者も見たことがある。ただし,企業にではなく,弁護士会にである。「この問題」を「法曹人口問題」に読み替えれば,この「上司の発言」は,法曹人口問題を先送りしようとする一部のエライ弁護士の発言と瓜二つである。「今は歯を食いしばって耐えるべき」というエライ先生の発言は,問題の先送りにほかならない。そして,このようなエライ先生は,弁護士会の中で,とっても幅をきかせている。

ということは,弁護士会は今,破滅の危機に直面していることになる。そうだとすると,國廣弁護士は,弁護士会にこそ,必要な人材である。講演などでお忙しいと思うが,ここはひとつ,本籍地の弁護士会のため,一肌脱いで頂きたいものである。(小林)

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