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2008年7月27日 (日)

デジタルサイネージ

京都大学美濃研究室が中心となって進められている「センシングWEBプロジェクト」全体会議で,NTTサイバースペース研究所の小池英樹氏が,現在取り組んでいるいくつかの研究を紹介してくれた。

その一つ,デジタルサイネージとは,ディスプレイに広告等の映像を流す技術だが,それだけでは,店頭で商品説明のビデオを垂れ流していることと変わらない。デジタルサイネージの特徴は,見る人にあわせて,映像を変更することにある。例えば,赤ちゃんを抱いた母親が通ればミルクの広告を表示し,若いサラリーマンが通ればビジネス指南書の広告を表示するという案配である。映画「マイノリティ・リポート」に,主人公が商店街を歩くと,レーザー光線が自動的に虹彩情報を読み取り,壁に主人公の興味を持ちそうなCMが表示されるシーンがあった(しかも,CMが主人公の名前を呼びかけていた)が,これが,現在想定されている究極のデジタルサイネージである。

デジタルサイネージの中で,小池氏のチームが取り組んでいるのは,通行人がどれだけこの広告に注目したかを知る技術である。具体的には,通行人の顔画像を自動的に特定し,その顔が広告の方を向いたか,どの程度注視したかを,画像処理技術を用いて自動的に解明する。この技術が実用化すれば,ネット広告がクリック数に応じて広告費用を算出するのと同じように,何人にどれだけの時間注視されたかで広告費用を算出することが可能になる。

デジタルサイネージは,現在,アメリカを中心に,将来性がとても期待されている。ただし,この技術が社会に受け入れられるためには,プライバシー権との調整が不可欠となる。広告側に設置されているセンサーが,どの程度の個人情報を取得することが許されるのかと,これに対する一般市民の信頼感をどうやって確保するのか。道を歩いていて,ふと広告に目をとめたことがきっかけで,次の角で突然,別のディスプレイから,「いまエビちゃんのハンドバックに目をとめたあなた。当店でエビちゃん推薦の新作ハンドバックをご覧になりませんか?」と話しかけられるような世界は,社会に許容されるのだろうか。

筆者自身としては,とても面白い世界が出現するという期待がある一方,筆者が前を歩くたびにディスプレイが次々と育毛剤やカツラのCMを表示する世界というのも,どうかなあと思っている。(小林)

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