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2008年9月22日 (月)

事故米・メラミン汚染牛乳問題と自主回収

事故米問題が農林大臣と事務次官の辞職に発展したと思ったら,今度はメラミン混入ミルク事件である。メラミンとは樹脂を製造するための工業原料であり,現代日本では食品に混入されることなど考えられないが,窒素含有量が多いため,中国では,食品に含有されるタンパク質料をごまかす目的で食品に混入されることがある。これを贋造という。メラミンには直ちに健康に害を及ぼす毒性は無いが,腎臓結石を促す作用がある。報道によれば,丸大食品は,メラミン混入原料を使用した可能性のある5品目の自主回収を開始した。

基準値以上の残留農薬を含有する事故米や,メラミンの混入したミルクを,その事実を知りながら,そのまま販売すれば,食品衛生法6条違反に問われるおそれがある。ただ,今回報道されたように,事故米を非事故米で希釈して販売したり,メラミン混入ミルクを原料の一部に使用したり,という程度で食品衛生法違反に問われるかは疑問だ。

食品衛生法62号は,「有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは付着し、又はこれらの疑いがあるもの(ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合を除く)」の販売を禁止している。違反は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金という刑事罰だ。社団法人日本食品衛生協会「新訂早わかり食品衛生法」によると,現実的に健康上の被害を生じさせる程度でなくても,同条項が適用されるとしているし,「疑い」だけで罰せられることになっているが,罪刑法定主義に照らせば,およそ健康被害の可能性がない程度まで希釈されたものを販売しても,食品衛生法には違反しないというべきだろう。食品衛生法62号は,罪刑法定主義からみると,とてもいい加減な規定であるともいえるし,刑事罰で食の安全を守ることの限界を露呈しているともいえる。

刑事罰に問われないとして,かつ,不法行為や製造物責任もしくは債務不履行に問われる可能性がないほど,汚染米やメラミンが希釈されていたとすれば,民法上も,企業に自主回収の法的義務はない。残る問題は,代表訴訟リスクになるのだろう。つまり,自主回収を行わず,その事実が露見して会社が損害を被った場合,取締役等は会社に対して損害賠償義務を負うのかという問題である。ダスキン事件大阪高裁判決の論理からすれば,取締役には積極的なリスクアセスメントを行う義務はあっても,必ず公表する義務まではない,ということになるのだろうが,「公表する」という積極的行動に比べ,「公表しない」という不作為は,積極的なリスクアセスメントの結果であるという主張が,実際問題として,通りにくい。その結果,現場におかれた取締役の判断は,どうしても「公表,自主回収」という選択をせざるを得なくなるのだろう。(小林)

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