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2008年9月26日 (金)

地方法科大学院の巻き返し

山梨日日新聞が2008918日の論説「法科大学院見直し論 司法改革の初心忘れるな」で,法科大学院は過剰であり,統廃合はやむを得ないが,法科大学院が合格実績のランク付け重視で淘汰され,地方法科大学院が切り捨てられ,都市部に集中する事態は避けなければならない,と論じている。司法制度改革は弁護士過疎解消等のため法曹増員が大きな柱となっており,地方の法科大学院には地域に根ざした法曹を育てる役割が期待されている,というのがその理由だ。

ところで,論説が紹介する山梨学院大法科大学院の平成20年度新司法試験合格者は7人,合格率は17.5%で,75校中47位である。2002年には,山梨県弁護士会と,司法改革推進のための協力協定を結んだ(Wikipediaより)。

一方山梨県弁護士会所属弁護士は77人,事務所数は39で,うち75人,37事務所が甲府市に集中している。甲府市以外は弁護士過疎と言っていいのかもしれない。

問題は,弁護士過疎地域を解消する必要があるとして(この点も議論があり得るところだが),そのために山梨学院大法科大学院を残す必要があるのか,という点だろう。例えば,甲府市以外(例えば富士吉田市とか,南アルプス市とか)の中学校や高校の,とても優秀な文系の学生に奨学金を出すとか,定年退職した裁判官や検察官の生活を援助しつつ田舎で法律事務所を開業してもらうとか,という方法で弁護士過疎を解消した方が,ハコを守るより合理的ではないのだろうか。

いずれにせよ,このような巻き返しは,ここ数ヶ月のうちに,下位校を中心にわき上がってくるだろうし,組織自己保存の本能に照らせば,当然の成り行きである。

ただ,各弁護士会と日弁連の動向には注目する必要があると思う。「日弁連はなぜ負けたのか?法曹一元とは何だったのか」で紹介したとおり,法科大学院が地方に乱立し,現在の過剰状態を招いたのは,法曹一元論に踊った日弁連にも責任がある。法曹一元を実現するためには,すなわち弁護士が裁判官になるためには,裁判官の転勤を廃止し,優秀な弁護士がその地方の裁判官になる仕組みを作る必要がある。そのためには各地方で法曹を養成することが必要だ。2000年(平成12)年当時の日弁連は,このような論理で,各地方での法科大学院設立を奨励した。そして,地方弁護士会のエライ先生は,地域の法科大学院と密接な関係がある場合が多い。そして,法曹一元論は,3度目の無惨な敗北を喫したにもかかわらず,日弁連は公式には,敗北を認めていない。従って,地方法科大学院の巻き返しに呼応して,地方単位会から法曹一元論が吹き出す可能性があるし,日弁連内部においても,法曹一元論が4度目の復活を遂げる可能性がある。そんな馬鹿なことはあるわけがないと思うが,そう確信もできないところが,恐ろしいところだ。

もし日弁連が,本気で法科大学院の大規模な統廃合を求めるのであれば,このような地方単位会の巻き返しの芽を摘むことが必要だし,自ら,特定の法科大学院を潰してみせることが必要になるかもしれない。(小林)

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