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2008年9月25日 (木)

事故食品の自主回収と穢れの思想

土門英司氏のブログ「そもそも非食用米から作ったデンプンに有害物質は含まれているのか?」は,「どの植物のデンプンも精製する際にはタンパク質や脂質、ポリフェノール類による着色等を取り除くために、希薄なアルカリや界面活性剤、さらにはそれらを除くためにしつこく洗う。コメ・ デンプンも例外では無いだろう。原材料は兎も角も、島田化学工業のデンプンの品質が確かであれば、殺虫剤もアフラトキシンB1も検出限界以下になっている可能性が高い」と指摘している。

たぶんそのとおりだろう。この件に限らず,現在話題になっている食品偽装や禁止薬物混入の問題は,我が国内では,どれも健康被害の可能性がないか,無視してよいほど少ない場合である。このような場合,食品メーカーの法的責任はどの程度あるのだろう。

       販売すれば食品衛生法違反(刑事罰)に問われる。

       食品衛生法違反には問われないが,回収義務はある。

       回収義務はないが,汚染物質を使用していることを告知する義務がある。

       汚染物質使用の事実を告知する必要さえない。

もちろん数字が若いほどメーカーの責任は重い。そして土門衛氏も指摘するとおり,食品衛生法違反にはならないと思う。では自主回収義務や告知義務はどうだろうか。科学的には全く健康に危険がないのに,自主回収義務や告知義務があるとすることは,合理的であるべき法理論に,非合理的な「穢れの思想」を持ち込むことにならないか。

実は,法理論だからといって,「穢れの思想」と無縁ではない。自殺のあった家屋については,裁判実務上,売主に告知義務があり,隠して売ると契約解除や損害賠償義務を課せられる(東京地裁平成20428日判決など)。

筆者としては,売買対象家屋で自殺があったことは法的告知義務の対象になることは支持しつつも,この思想を無闇に拡大することはいかがなものか,と思う。

そこで,食品安全の問題に関しては,毒性が希釈ないし除去されておよそ危険でなくなった食品を回収する法的義務はメーカーにないと考える。告知義務があるか否かは,場合による(例えば,主たる原料の半分以上が汚染された物質である場合には,仮に健康被害が発生し得ないとしても,告知する義務がある)というべきであろう。(小林)

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