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2008年9月13日 (土)

新司法試験合格者数発表

法務省が,新司法試験の合格者2065人を発表した。「今年の合格者は21002500人が目安とされたが届かなかった」と報じられた。

この「目安」について解説しておこう。

法務省のホームページ上で,司法試験委員会は,平成17228日と平成19622日,つまり1年おきに,「併行実施期間中の新旧司法試験合格者数について」と題する発表を行っている。前者は,平成18年度の新司法試験合格者数を900人ないし1100人,平成19年度の新司法試験合格者数を平成18年度の2倍程度,すなわち1800人から2200人と目安とした。そして後者は,平成20年度の新司法試験合格者数を2100人から2500人,平成21年度を2500人ないし2900人,平成22年度を2900人から3000人が目安になるとしている。そして,平成18年度合格者数は目安上下限の丁度中間,平成19年度は下限ギリギリとなり,今年度初めて,合格者数が目安の最低限を下回ったのだ。

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言うまでもなく,「目安」に応じた司法研修所運営予算は用意されている。しかも,受験者は7800人以上いるから,この中から「目安」以上の,例えば2300人を合格させることの障害は何一つ無い(合格ラインを数点下げればよいだけだ)。それにもかかわらず,「目安」を下回る2065人しか合格させなかった。これは,「2065人を合格させた」というより,「これ以上合格させることができなかった」からである。それほどまでに合格最低ラインのレベルが下がっていること,言い換えればかなり程度の低い人が合格していることが分かる。それならもっと合格者数を減らせば良いではないかとも言いうるが,そこはお役所のことだから,「20103000人」の閣議決定に正面から楯突くことはできない。しかし,来年以降500人ずつ合格者を増やして,2010年3000人を実現することが可能であるとは,誰も思っていまい。

重要なポイントは,「20103000人」という閣議決定の実現が,事実上不可能になったことと,それにもかかわらず,法務省の閣議決定不履行を批判する声が無い(たぶん)ことだ。これは,新司法試験合格者の質の低下が極めて深刻であることが,関係者の共通認識になっていることを示す。

合格者数のスローダウンを要請する日弁連の緊急提言の成果と見る向きもあろうが,たぶん違う。グラフのとおり,昨年の合格者数が目標値の下限ギリギリとされた時点で,今年の結末は予測の範囲に入っていた。日弁連の緊急提言は,もちろん法務省との密接な連携の下でなされたものに違いないが,その意義は,法務省が「目安以下」の決断をするためのアドバルーン程度だろう。法務省から言わせれば,平成18年は法科大学院のお手並み拝見,平成19年は疑問符,平成20年度は「だからいわんこっちゃない」といったところである。

合格者2065人のうち,最低50人は二回試験で不合格になる。それを見越しての「2065人」であることを考えると,法務省が当面想定している人数は2000人と見られる。ただ,現在の質を見る限り,2000人でも多いというのが法務省担当者の本音だろうし,実際,今後数年間,合格者の質は下がり続けると予想される。他方,法科大学院側は,早急に統廃合を行って,再度,3000人に向けての足固めをしたいところだ。

このような次第で,当面,「2000人」が攻防ラインというか,「38度線」というか(古いね),になるようだ。そして,今までのペースから言うと,平成21年の2月ないし7月に,法務省は次の司法試験合格者数見通しを発表することになる。このときが,一つの区切りになるだろう。(小林)

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