カメラ付き自販機壊され「監視社会」と落書
10月14日の各紙によると,愛知県豊橋市岩田町の岩田運動公園で,110番機能を持ち防犯カメラを装備した自動販売機が壊され,「監視社会」と落書きされた。
この自動販売機については,本年1月8日のブログでも触れた。自販機荒らしと街の治安維持のために,前方を人が通っただけで撮影する機能を持つ自動販売機である。その時は,群馬大学の藤井雄作教授とコカ・コーラボトリングの提携だったはずだが,10月10日に愛知県に設置されたものが,この系列に属するか否かは分からない。ちなみに,このブログによると,愛知県の自販機荒らしは,2006年は全国ワースト1位だったが,翌2007年に被害額は3分の1以下に激減してワースト1位を返上したそうである。この防犯カメラ自販機は,その後に設置されたものだ。
このタイプの自販機に対する私の考えは,以前と変わらない。これは例えるなら,道のほうぼうにカメラを持った人が立っていて,その前を横切ると写真を撮られる,ということと同じである。「何で写真を撮るんだ」と問いかけると,「街の安全のためです。ただ撮影しているだけで,事件などが起こったときに現像するだけですからプライバシーの配慮も万全です。ついでといっては何ですが,私はジュースやお茶の販売もしています。買って行きませんか?」との答えが返ってくる。そう答えられたら読者は 「ご苦労様です。治安維持に役立つならどうぞ撮影してください。」と納得するだろうか。私なら不愉快に思う。「今撮影したこのとき犯罪は起こりましたか?起こっていないなら,撮影した画像は今削除してください」と答えたい。まして,お茶を買う気など起きない。
前回私はこう書いた。「自販機荒しという犯罪が相当程度発生している以上,これを防止するという目的は正当である。次に,カメラで自販機荒らしが防止できるかについては,やや疑問もあるが,あるとしておこう。しかし,自販機荒し防止を目的とする撮影は,その目的に必要な限度に限定されなければならない。その自販機に何の用もない,ただの通行人を全員撮影するのは行き過ぎである。」
今回報道された自販機の破壊はれっきとした犯罪であり,それ自体として弁護の余地はない。しかし,この犯行から明らかになったことが二つある。一つは,防犯カメラ付き自動販売機は防犯の役に立たないということ。もう一つは,自動販売機にまで防犯カメラが装備される風潮を快く思わないのは私だけではない,ということだ。
私自身は,ネットワークカメラやユビキタス技術の推進を後押ししたいという,弁護士としては比較的珍しい(?)立場にある。しかし,学者の研究と,業者の思惑と,役所の予算ばらまきがいびつな形で結合すると,ときどき,とてもセンスのないものが生まれるのは困ったものである。(小林)
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