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2008年10月 8日 (水)

下位法科大学院の運命

日本中の法科大学院が,1カ所に固まって存在し,学費その他在学中のコストに一切差がないと仮定する。もしあなたが,司法試験受験を目指すとするなら,合格率6割の上位校と,合格率1割の下位校のどちらに入学したいと思うだろうか。質問するのが馬鹿馬鹿しいほど,答えは明らかだ。上位校には入学希望者が殺到し,優秀な者だけ選抜される結果,上位校の司法試験合格率はますます上がっていく。

新司法試験も3年目を迎え,法科大学院の序列がはっきりしてきた。将来に向けて,この序列は必ず拡大し,最後は固定化する。決して平準化することはない。なぜなら,優秀な者ほど,上位校を目指すからだ。

もちろん,序列が拡大し固定化するといっても,縦一列にはならない(縦一列とは,例えば1位の一橋法科大学院における最下位の学生でも,2位の慶應大学法科大学院のトップの学生より上位,という状態を意味する)。地域的な事情や,受験日程の巧妙な設定や,学費の問題や,学生の嗜好(たとえば,「この教授の講義を受けたい」とか),教授陣の努力等の要素が加わるからである。だから,全体的には,ピラミッド型となるだろう。とはいえ,全体として,法科大学院の序列化が進行し,最後に固定化することは,歴史が証明している。

かつて共通一次制度実施後の大学がそうであった。歴史は繰り返すのである。しかし,法科大学院の序列化は,共通一次制度実施のときに比べ,より顕著に進行することになろう。なぜなら,法科大学院学生の目標は,一つしかないからだ。

このまま放っておいても,数年後には,上位校の合格率は9割を超える。他方,下位校の合格率は1割を切り,1学年一人合格するか否かとなる。そうなれば,下位法科大学院は生き残れない。というより,そうなることが明らかである以上,現時点でも,「お前はすでに死んでいる」状態である。

この考え方で行くと,上位何校が生き残るのだろう。合格者数年3000人を前提としても,上位20~25校が限度となる。

だからこそ下位校は上位校の定数減を求めているわけだが,これは不可能と考える。そうだとすると,下位校生き残りの途は,とても限られてくる。すなわち,目標が一つしかないという現況を改めることだ。

そのやり方は具体的には2つある。一つは,司法試験合格以外の目標(たとえば,公務員試験合格など)を設定することである。もう一つは,司法試験合格のレベルを,法科大学院毎,または,地方毎別々に設定することである。地方で司法試験合格レベルをバラバラにすると,その帰結として,例えば大阪の司法試験に合格した弁護士は,京都地裁で仕事ができないことにもなりうるが。もちろん,その是非当否は全然別問題である。

不思議なのは,法科大学院の制度設計に携わった方々は,この展開を予想しなかったのか,という点だ。共通一次実施直後の成り行きを体験している筆者の世代から見るなら,予想しなかったとすれば,それはとても愚かしいことに思える。(小林)

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コメント

>>不思議なのは,法科大学院の制度設計に携わった方々は,この展開を予想しなかったのか,と>>いう点だ。

この考察には、一度制度を施すと、後でなかなか調節できないって言う前提があるのでしょうか?

私は、世の中新しい制度を設立するときには、当初の予想とかけ離れることがあっても仕方がない(犠牲者及び被害者が出ることも含めて)と思います。そうでないと、新しい創造をはぐくむことが出来ないと。さらに、公務員が新しい事をすることに躊躇するようになると心配します。むしろ、設立後に現状と理想のギャップを柔軟に調整することが大事だと考えます。

投稿: まるまる | 2008年10月21日 (火) 11時06分

結局のところ、競争の原理が働いて、既得利権を侵害されることを恐れた既存の弁護士が適当な理屈で法科大学院制度をつぶそうとしているようにしか思われません。建前は、弁護士法1条の使命を背負い人権の擁護者、本音は利益の追求・・・今後の法曹に期待している後生としては残念な限りです。
だから、然るべく法科大学院制度ができたのです。

法曹の担い手として自信があるなら「来るもの拒まず、去るもの追わず」でいいのではないでしょうか。
その上で、淘汰が起こるのは自然の摂理です。

投稿: 法曹の担い手として | 2008年11月11日 (火) 10時09分

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