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2008年10月 5日 (日)

次世代ロボットと知的財産戦略

10月3日,(財)大阪市都市工学情報センター主催の,「新たなビジネスチャンスの創出の促進に向けた知財管理・活用方策に関する懇談会」に出席した。出席者は筆者のほか,遠山勉・三品岩男両弁理士,ヴイストンの大和信夫社長,近畿経済産業局の阪谷敏明特許室室長補佐である。会議の趣旨としては,知的財産を活用して関西における次世代ロボット産業を振興するにはどうしたらよいか,ということらしい。また,梅田北ヤードの再開発もからんでいるようだ。

特許権をはじめとする知的財産権を活用して,次世代ロボット産業の振興に役立てようという発想はずいぶん前からある。しかし実は,筆者自身は,この考え方には,あまり賛成できない。たぶん,順番が違うと思う。

次世代ロボットと並んで日本の重点育成産業に指定されたものにバイオとナノ・テクノロジーがある。この二つは,それ自体が知的財産の固まりのようなものであって,これらの産業を育成するためには,特定の技術を知的財産として保護し,しかる後に,これを製品化・産業化するというプロセスが必要だ。

これに比べて,次世代ロボットと知的財産の関係は少し違うと思う。次世代ロボットはいわば総合技術であり,バイオやナノよりも,自動車やロケットと近い。どれだけ最先端の技術を使うかではなく,枯れて信頼性のある技術をどう組み合わせるかが産業競争力の中核になる。

この総合技術というのは,最先端の技術を揃えただけでは実現しない。例えば中国が有人宇宙飛行を実現しており,日本人は「技術力は日本が上」と負け惜しみを言う。しかし,個々の技術力と,総合技術力は違うのだ。同じことはロシアの宇宙技術や軍事技術にも当てはまる。今の日本人の総合技術力では,どんなに最先端の技術を持ち寄っても,有人宇宙飛行は実現できない。

では日本人に総合技術力が無いかというと,決してそんなことはない。自動車産業がよい例である。

では,次世代ロボット産業の育成と知財戦略の,あるべき関係とは,どのようなものか。それは,既にある知的財産を次世代ロボットに役立てようと言う発想ではなく,次世代ロボットを開発する中で醸成された技術をいち早く知的財産として保護してやるということだと思う。

いま,大阪の中小企業は,多くの技術やノウハウを持っている。ただ,それらはそれだけでは,特許が取れるほど熟成していない。次世代ロボットの製品化を実現する中で,これらの技術やノウハウは洗練され,特許が取れるほど熟成していくだろう。これらを知的財産として保護すれば,大阪の中小企業にとって,次世代ロボット製作に自社の技術やノウハウを投入する大きな動機になる。そしてそのためには,熟成していないアイデアや技術を一定範囲に公開しても,他社に盗まれない安心感を与えてあげることが必要だ。このような仕組みをうまく作れば,それは,次世代ロボット産業の育成に役立つし,知的財産戦略としても,有用性のあるものになると考える。平たく言い換えれば,次世代ロボットに必要なのは,知的財産→ロボットという発想ではなく,ロボット→知的財産という発想である。(小林)

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