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2008年10月16日 (木)

殺虫剤入中国産冷凍インゲンと日本企業のコンプライアンス

1011日,東京都八王子のスーパーマーケットで中国産冷凍インゲンを購入した女性が舌のしびれとむかつきを訴えた。このインゲンからは,基準値の35000倍近い農薬のジクロルボスが検出された。これはほぼ原液であるため,厚労省や警視庁は,残留農薬ではなく故意に混入されたとの見方を強めている(1016日日本経済新聞)。中国工場の責任者はテレビのインタビューに対し,流ちょうな日本語で,被害者へのお見舞いを述べていた。

現時点では,袋に穴が空けられた痕跡はなく,かといって同ロットの他の製品からジクロルボスは検出されていない。従って捜査機関等は当面,被害者の自作自演を含め,あらゆる可能性を想定し,これを一つずつ潰す作業に追われることになろう。冷凍餃子事件も未解決の現時点において,今回の事件が起こったことは,冷凍餃子事件が偶発的かつ例外的な事件ではなく,今後も同様の事件が起こりうる可能性を我々に突きつけている。

ところで今回考えてみたいのは,このような事態を受け,中国産食品の輸入に携わる日本の企業は,故意による毒物添加の可能性を排除する責任があるか,という点である。

もちろん,一般論としては,そのような責任は無い。故意による毒物添加の可能性を排除するにはサンプリングでは足りず,全品検査しかないが,これは現実問題として不可能だからだ。

しかし,無理と決めつけることに多少の躊躇もある。冷凍インゲン及び冷凍餃子事件が中国内製造過程における故意犯罪と仮定するなら,その犯人には,消費者の健康を害する明白な悪意が認められるが,「たぶん日本人」という以上に,特定の誰かを害する意図はない。とすると動機は何かが問題となるが,犯人を劇場型愉快犯と仮定すると,冷凍食品を選ぶのに不自然さが残る(なぜなら,いつ消費者が食べて事件が起きるか分からないからだ)し,報道された限りでは,恐喝目的もないし,政治目的も窺えない(政治目的があるなら,犯行声明等があってしかるべきだろうし,やはり,いつ事故が起きるか分からない冷凍食品を標的にするのは不自然である)。

そうなると,犯人は単純に,不満の発露として,毒物を混入した可能性が出てくる。その不満とは例えば,工場幹部に比べて,作業員である自分の待遇が極めて劣悪である,すなわち搾取されている,という不満だ。

ここで気になるのが,工場長の流ちょうな日本語である。この工場は,中国法人とはいえ,資本は日本企業だろうし,日本企業の支配が相当程度及んでいると想像される。もちろん,そのこと自体は何ら問題がない。現地法人の社長が中国人なのは,中国政府の意向だろう。しかし,仮に工場内に歴然とした待遇差別と現業労働者の搾取が存在し,かつ,日本企業がこれを指導ないし黙認しているとするならば,労働者の悪意が,工場とその背後にいる日本企業と日本人とに向いても不自然ではない。万一このような背景が存在するならば,これを法的責任といいうるか否かはさておき,当該日本企業も一定レベルの責任を免れないと思う。

もちろんここに書いたのは,筆者の憶測でしかない。報道機関には是非,この点を検証してみてほしいと思う。(小林)

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» 中国産冷凍インゲンに農薬混入 [風まかせ]
農薬いつ混入?また難題 冷凍インゲン、被害訴え続々(朝日新聞) - goo ニュース 中国産の冷凍インゲンから許容基準の3万倍を越える農薬のジクロルボスが検出されました。 この量は誤って混入したとは考えられない、故意に誰かが入れたと思われるような高濃度です。 前回の冷凍ギョーザ事件のときは中国当局がうやむやにして真相解明で来ず、再び今回の事件が発生しました。今回はどこまで本気で真相を解明して行くことが出来るのか。 食品への不安を早く解消することを望みます。 ... [続きを読む]

受信: 2008年10月16日 (木) 22時36分

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