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2008年11月24日 (月)

棚瀬孝雄編著「市民社会と法」

本書には,現代日韓両国が直面する社会の変容と,これが法制度に及ぼす影響に関する,両国の論考が収録されている。我々法律家は法律を道具にご飯を食べているわけだが,その法律は絶対的なものではない。社会の変容は国家のあり方を変え,国家の産物である法律や法制度を変える。法曹人口問題を含めた司法制度も例外ではない。

例えば,国際的な人口の流動化は「国民国家」のイデオロギーを崩壊させ,血統主義を取る我が国の国籍法制のあり方に影響を与えずにおかない。また,個人→家族→地域という同心円状の社会構造の崩壊は,むき出しの個人を国家と対立させることにもなりうるし,NPO法人など,市民活動の新たな拠り所を活性化させることにもなりうる。この二つの問題は,「女性」という一つの概念でクロスしている。すなわち,少子高齢化社会における新たな労働力としての女性と,伝統的家族形態の中核にあった女性である。

そして,韓国は軍政後の民主化の一環として,日本はバブル崩壊脱出の手がかりとして,社会の変容を見越した司法改革に取り組んでいる。

学者ばかりの大所高所からの論考なので,目前に迫った問題の解決には何の役にも立たない。しかし,日々の事件処理や,せいぜい法曹人口問題を見渡す視野しか持たない我が身にとってこの本は,我が職業の将来を照らす探照灯として,大変貴重な示唆を与えてくれるように思う。(小林)

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