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2008年12月19日 (金)

ズボン女性のお尻を撮影する行為は有罪か

やや旧聞に属するが,ズボン女性(27歳)の背後からカメラ付き携帯電話で撮影を行った自衛官の男性(31歳)が北海道迷惑防止条例違反に問われた刑事裁判で,11月10日付の最高裁判所第3小法廷は上告を棄却し,有罪と判断したが,田原睦夫判事のみ,無罪との反対意見を述べた。

反対意見の論理は,平たく言うと,次のとおりである。「①『臀部を視る』という行為それ自体に『卑わい』性は認められない。②視る行為に卑わい性が無いときに,撮影する行為が卑わい性を帯びることはない。③仮に本件の撮影行為が『卑わい』な行為にあたるとしても,この条例で罰するほどのものではない」

①と③については,その通りと考えるが,②については,疑問である。肉眼で視ることと,カメラで撮影することの間には,質的な差があると思う。肉眼で視るときは,所詮,その人限りである。その情景を他人に伝えようとしても,言葉で記述するか,絵にするかしかない。いずれの場合でも,本人の主観と描写能力を経て表現された尻は,もとの尻ではない。

これに対して,カメラで(特にデジタルカメラで)撮影された画像は,撮影者限りのものではない。幾らでも複製でき,ネットを通じて無限に流通しうる。デジタル・ネットワークの時代において,この違いは重視するべきだと思う。言い換えると,女性の尻を肉眼で視る行為は,プライバシー情報の取得にはならないが,同じ映像をカメラで撮影する行為は,プライバシー情報の取得になり,正当性がない限り,違法なプライバシーの侵害となると思う(プライバシーの定義を論じると大変なので,ここでは触れない)。

田原裁判官は,「写真の撮影行為であっても,一眼レフカメラでもって,『臀部』に近接して撮影するような場合には,「卑わい」性が肯定されることもありうる」と述べているが,この記述は多少カメラを扱う者から見れば,不適切だし,矛盾している。なぜなら,「臀部に近接して撮影」する態様が問題なら,一眼レフカメラである必要はないし,臀部を大写しにするのがいけないという趣旨なら「望遠レンズ」という言葉を用いるべきだし(一眼レフカメラである必要はない),この場合「近接して撮影」する必要はない。現代なら,普通に写真を撮って,臀部だけ思いっきり拡大するという方法もある。

多数意見は,「5分間,40メートルあとを付けて,11回撮影した」という態様を問題にしていると思われるし,それは,本件女性のプライバシーの侵害という見地から見れば,間違いなく違法であると思う。ただ,この被告人が罪に問われた北海道迷惑防止条例違反に該当するのか,すなわち,最大懲役6ヶ月,罰金50万円に該当しうるほどの違法行為であるのか,については,田原裁判官と同じで,疑問である。(小林)

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