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2008年12月 1日 (月)

飯尾潤著「日本の統治構造」

国会のねじれ現象などによって,リーダーシップ不在が問題になるとき,首相公選制や大統領制への移行が議論されるが,それは誤解であると,この本は説く。日本国憲法の採用する議院内閣制は,本来,権力集中と迅速かつ強力なリーダーシップを可能にする制度であった。これを阻害していた最大の要因は中選挙区制であり,ついで官僚内閣制であり,本来一体であるはずの政府・与党二元体制と,政権奪取意欲のない野党による55年体制であった。

特に中選挙区制は,同一政党の候補が同一選挙区に複数立候補するため,選挙は必然的に「候補者」の選択になり,「政党=政策」の選択ではなくなる。そのため国民は政策の選択に参加し得ず,その欲求不満を紛らわすものとして同一政党内での首相交代劇が演じられてきた。

しかし細川内閣で中途半端ながら小選挙区制が導入され,マニフェスト選挙が定着してきた今,これを推し進めるならば,議院内閣制は本来のあり方を実現し,健全な民主主義体制が実現される可能性があるというのが本書の主旨である(たぶん)。この立場によれば,小泉郵政選挙は,一見反則であるが,議院内閣制の本来のあり方に即したものだったことになる。司法についてはごく簡単に触れられているだけだが,政治における権力集中が制度的に実現する以上,チェック機関としての司法の役割も増すと指摘されている。

総じて,そうだったのかと「目から鱗」の指摘と,そうそうと「ハタと膝を打つ」(古い!)指摘が満載の,刺激に満ちた書物であった。著者は私と同い年。大したものである。(小林)

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