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2008年12月29日 (月)

「できそこないの男たち」福岡伸一著 光文社新書

前著「生物と無生物のあいだ」があまりに面白かったので,空港で即購入。出張の往路で読んでしまった。文章力があれば,どんなマイナーな分野でも素晴らしい本が書けることの証明である。

イブはアダムの肋骨から生まれたとする聖書の記述は生物学的には間違いで,もともと生物の基本構造は女であり,男はその改造品である。このこと自体は,一般市民にも常識となっているが,本書はその常識を,分子生物学の立場から明快に説明する。前著と同様の,名誉と欲望を巡る学者達の人間くさい争いは,実に面白い。その中でも,「人は,知識がなければ,事実を見る(文字通り眼で見る)ことができない」という指摘は鋭いと思う。これは分子生物学に限らず,法律実務を含めた至言であろう。

過去から未来へ遺伝子を受け継いでいく生命の流れの中で,女は縦糸である。男は,縦糸と縦糸を斜めに結ぶ横糸であり,母の遺伝子を別の母の娘に引き継ぐための遺伝子の運び屋に過ぎない。運び屋となるために無理な改造を受けた男の体は,女より弱い。

某国では,王室に過去40年間男子が産まれなかったため,皇位継承を巡る議論が盛んである。男系の伝統を固持すべきとする立場は,生物学的にはY染色体を守れという主張となるが,Y染色体それ自体には,遺伝子の運び屋としての機能しかない。大事なのはY染色体ではなく,Y染色体が運んだ遺伝子であるという主張には,とても説得力がある。もちろん,現代科学が解き明かした範囲では,という限定付きではあるが。

一点だけ気に入らないのは,「男はできそこない」という指摘だ。女を改造した結果,女より弱くなってしまったとしても,だからといってできそこないとは言えないのではないか。改造は一つの進化であり,ある種の機能については,女より優れることになったのではないか(と思いたい)。クロックアップしたパソコンが,熱暴走しやすくて寿命が短くても,ゲームだけはサクサク動くように。

妻が妊娠中,超音波検診で胎児や自分の胎内をつぶさに見てきた帰り,「人間って,本質的に動物だなあ,としみじみ感じた」と述懐したので,私はすかさずこう言い返した。「女は動物かもしれないが,男は違う。」

私がただちにひっぱたかれたのは言うまでもない。(小林)

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