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2008年12月31日 (水)

THE KINGDOM (DVD鑑賞)

映画が言っていることが本当なら,イスラエルのガザ攻撃は,当分終わらない。興味があるけど忙しいという人は,最初の3分だけご覧下さい。

1932年に建国されたサウジアラビア王国(THE KINGDOM)は厳格なイスラム教国だったが,世界最大級の油田が発見されたことで,思想も体制も全く異なるアメリカ合衆国との結びつきを深めていく。現在,世界最大の産油国はサウジアラビアであり,世界最大の石油消費国はアメリカ合衆国だ。その結果,サウジアラビアの王族はイスラム教の教義を唱える一方で,異教徒から受け取ったオイルマネーで贅沢三昧。純粋な若者はこの矛盾を許すことができずにテロリストになる。映画はイスラム原理主義テロリストの犠牲になった友人の復讐を果たすFBI捜査官の物語として進行するが,その背景にある「本当の悪」を示唆して終わる。

もちろんこの関係は,サウジアラビアとアメリカ合衆国の関係にとどまらず,中東産油諸国と,(西側)先進国との関係に置き換えることができる。先進国は中東産油国から石油を買う。中東産油国が手にした莫大なオイルマネーは,世界中に投資される。投資されたカネの流れの中心にあったのがウォール街だ。投資を元手に先進国は金を儲け,より多くの石油を買う。一見,石油は安い方が先進国に有利と思われがちだが,そんなことはない。石油はある程度高止まりで推移することが,現代世界経済が健全であるために必要である。だから,昨今の原油価格の暴落は,世界経済を枯死させる危険がある。

イスラエルのガザ攻撃により,暴落一方だった原油価格が下げ止まり,上昇の兆しを見せている。原油価格の上昇は,中東産油国にとっても,先進国にとっても,共通の利益である。だから,先進国はもちろん,同胞を殺されている中東産油国にとっても,イスラエルのガザ攻撃は歓迎すべき事態である。そこで,ハマスに武器を供給して紛争を長引かせることにしよう,と彼らは考えている。もちろん,イスラエルがやりすぎない限り,まともに対決する気など無い。なにしろ,イスラエルとその後見人の軍事力は桁違いに強力で,貿易センタービル2棟を破壊しただけで,その報復として中東2国の政府を叩き潰されたのだ。イスラエルもそのへんの事情は百も承知で,ガザに限定した攻撃を行っている。ブッシュ現大統領は,残り僅かの任期中に責任を問われるおそれはないし,テキサスの原油が値上がりするのは歓迎だから,当然事態を放置する。オバマ次期大統領にとっても,最優先事項は国内の景気回復である。誰もがこの戦争が長引いてほしいと思っている。だからこの戦争は,オバマ大統領が就任した後,有効な(と思われる)景気対策が打ち出されるまでの間,終わらない。

日本各紙は,相次いで人権擁護の立場からイスラエルのガザ空爆を批判する社説を掲載した。しかし,イスラエルのガザ攻撃をどう評価するかは,立場によって違うということになる。これも政治というものの一面なのだろう。(小林)

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